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死亡通知書 暗黒者/Death Notice (ねこ4.4匹)

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周浩暉著。稲村文吾訳。ハヤカワ・ポケット・ミステリ

2002年、省都A市でひとりのベテラン刑事が命を落とし、復讐の女神の名を冠す謎の人物〈エウメニデス〉による処刑の序曲は奏でられた。インターネットで死すべき人物の名を募り、遊戯のごとく予告殺人を繰り返す〈エウメニデス〉から挑戦を受けた刑事の羅飛は、省都警察に結成された専従班とともに、さらなる犯行を食い止めるべく奔走する。それは羅飛自身の過去――18年前の警察学校生爆殺事件の底知れぬ暗黒と相対することでもあった……。中国で圧倒的な人気を誇り、英米で激賞された華文ミステリ最高峰のシリーズ第一弾。(裏表紙引用)
 
2021このミス4位、本ミス5位作品。
三部作とのこと。中国で2009年に刊行され、累計120万部を売り上げ、ネットドラマは累計閲覧者24億回というモンスター小説だそう。
なんとなく華文SFや華文ミステリーは自分に合うなあと思っていたのだが、この本を読んでそれは確信に変わったかな。めちゃくちゃ好みだった、これ。
 
まず登場人物が全員個性的。主人公の羅飛(ルオフェイ)は龍州市公安局刑事隊長。もとは警察学校きっての天才で、過ちを犯し左遷、しかしその後頭角を現し昇進。現場ではすぐに犯人の体格や手の傷まで当ててみせる実力派ぶり。18年前に親友と恋人を爆発で亡くし、それを自分のせいだと悔いている。今回羅飛の相方?となる犯罪心理学の専門家、慕剣雲(ムー・ジエンユン)や、コンピュータ専門家の曾日華もいい味出してる。最初感じ悪いなと思っていたんだけど、だんだん実力を発揮して人間味も出てきた。あと重要なのはA市公安局刑事大隊長(事件が起きたところ)のハン。これがなんと意外とクセモノでね。。最後明かされた秘密にビックリ。それによる展開にもビックリ。ルオにも言えることなんだけど、ちょっとノワール入ってるのか、信じられないような決断をしたりするので新鮮。まあいくら新鮮でも、恋人の歯列標本にディープキスして本人確認するシーンにはどん引いた…。
 
法で裁けない悪行を成す人間に狙いを定めて「死亡通知書」という名の死刑宣告を送る「エウメニデス」との対決は実に見もの。かなりの知能犯なので、警察側にも犠牲者が出たり保護対象者を目の前で殺されたりと気の休まることがない。麻薬売買事件との絡みも気になるし、エウメニデスの正体はまさかだし、とにかく誰かのことを……だと思っていたら違った、というパターンが多い。色々な事態が起こるけれど、どれも人間関係や過去の事件に繋がっているのでドラマ性も高いな。(エウメニデスの動機がちょっと浅いけど。ルオのほうがよっぽど辛い経験してるような。。)
 
結局続きものなので大団円とはいかないけども。ルオやハン、エウメニデスの性質がハッキリしてきたのでここからどう展開するのかな、ってところ。手札は結構晒してるから、第二部第三部は攻防戦になるのかな。またしても人間関係がひっくり返ったりしそうで楽しみ。
 
人によって好き嫌いはあるだろうけれど、かなり凝ったストーリーで読み応えはあると思う。