すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

三幕の殺人/Three Act Tragedy  (ねこ3.9匹)

f:id:yukiaya1031jp:20210917153935j:plain

引退した俳優が主催するパーティで、老牧師が不可解な死を遂げた。数カ月後、あるパーティの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男らが事件に挑み、名探偵ポアロが彼らを真相へと導く。ポアロが心憎いまでの「助演ぶり」をみせる、三幕仕立ての推理劇場。新訳で登場。(裏表紙引用)
 
ポアロシリーズの9作目。初読時も割と好きで印象深かった作品。
 
もと俳優と演劇パトロン、若い娘が探偵役をつとめる作品で、ポアロは出だしと中盤以降にしか登場しない。俳優の暮らす<カラスの巣>パーティ上で、誰からも愛される牧師がカクテルを飲んだ後死亡した。後日、招待者が数人重複するパーティで今度は俳優らの友人でもある医師がポートワインを飲んで死亡する。医師の死因はニコチン中毒で、殺人と断定された。第一のパーティーの死亡事件との関連は?
 
第一幕から第三幕まである構成で、それぞれで殺人が発生する。彼らの人間性や秘密を調査する俳優たちが様々な疑惑をあぶり出すが、犯人特定には至らない。そこはやはりポアロに頼らざるを得ないのだ。捜査よりも大事なのは思考だというポアロの名言が響く。論理的な犯罪だが、犯罪動機となるとサイコパスの部類で、クリスティの中でもすこぶる残虐なタイプの作品と言わざるを得ない。犯罪の全てに理由付けがあるほうが好きだが、この作品の場合は犯人の個性が際立つ結果となり良かったと思う。そしてポアロが完璧な英語を話さなかったり、自慢をするのにはあるポリシーに基づいているということがこの作品でハッキリする。やっているうちに堂に入ってしまってそれが芝居ではなくなっているのではないか、とファンとしては邪推してしまうが。。
 
若い女性のロマンス要素もありで、ドラマ的にもなかなか盛り上がれる作品。