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殺人鬼がもう一人  (ねこ3.9匹)

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若竹七海著。光文社。

20年前ほど前の連続殺人事件<ハッピーデー・キラー>以来、事件も事故もめったにないのどかな町――だったはずの辛夷ヶ丘で、悪徳(?)警察官の砂井三琴は今日も大忙し。苦みのある読後感と短編ミステリーならではのツイストが堪能できる6編を収録。(紹介文引用)
 
若竹さんの最新刊。(出てから結構経ってるけど)また新しいキャラクターが登場。東京郊外のベッドタウンにある辛夷ヶ丘署に勤務する砂井三琴。刑事ではなく生活安全課の捜査員。これがまた若竹さんの描くキャラらしく、なかなかの悪徳。犯罪者の落としたお金で競馬したり捜査中に窃盗したり、犯人を見逃したり。。こりゃとんでもないヒロインだぞ、と思っても読むうちにその悪事が格好良く見えて来ちゃうんだから凄いなあ。。
 
「ゴブリンシャークの目」
街の重要人物、箕作ハツエが強盗に襲われる。犯人はすぐに判明したが、ハツエは犯人をかばうし警察は「ハツエ様の言うことは絶対」だしどうなることやら。。雪舟の絵の盗難が起きたり色々複雑だけど、一番複雑だったのはあの人だった!ゴブリンシャーク…なるほど…。ていうか捕まえんのかーい。
 
「丘の上の死神」
市長選挙で暴動!与党系市長が当選すれば辛夷ヶ丘署は閉鎖されない、対立候補議員の夫が変死…辛夷ヶ丘の上司どもは本当に腐ってるなあと思いつつも、三琴も人のこと言えないからなー。入れ歯から真相を見抜く三琴すごい。不労取得すな。
 
「黒い袖」
警察官一族の結婚式。新婦のストーカーから嫌がらせのシャンパン、祝辞を頼んでいた親友のドタキャン、祝儀をがめようとする親族などなど、ドタバタすぎる。。語り手は三琴ではないのだが、最後にスっとまとまった。いや、黒いけど。真っ黒だけど。黒い袖の伏線は気付かなかった!
 
「きれいごとじゃない」
三琴が潜入捜査でハウスクリーニング会社の新人に。強盗が狙っている家を探す目的なのだが…。いやいや、登場人物に善人ゼロ。。娘夫婦の家に来ちゃいけない理由、こんなのアリ!?いや若竹作品ならばアリなのだ。
 
「葬儀の裏で」
姉の葬式で一族が団結!いやいや、これ悪いほうの。。どいつもこいつも性根が腐っている感じだけど、姉の孫が強烈だったな。なかなかここまでのクズはいない。。でも一番コワイのはあの人でした。。。ひぃ。
 
「殺人鬼がもう一人」
殺し屋の女性が主人公。三琴も関わるし、最初から話題になっていた連続殺人鬼の話がここで繋がってしまう。殺されたオッサンも哀れだけど、犯人も語り手もひどい人生だなあ。。若竹さん容赦なし。
 
以上。
若竹さんらしい想像以上の黒さで大満足。三琴は決して褒められた捜査員ではないけれど、頭は切れるし身長も高くてヒール履きこなしてカッコイイ。最近の若竹作品ほどにはややこしすぎないし、これは気に入ったなあ。言葉選びもセンスいいし。シリーズ化希望。