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帝都衛星軌道  (ねこ3.5匹)

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島田荘司著。講談社文庫。

一人息子が誘拐された。身代金の額はわずか十五万円。受け渡しの場所として山手線を指定され、警察側は完璧な包囲網を敷くが…。前後編の間に、都会の闇で蠢く人びとを活写した「ジャングルの虫たち」を挟む異色の犯罪小説。大胆なトリック、息をつかせぬ展開、繊細な人間描写が織りなす魅力に満ちた傑作。(裏表紙引用)
 
島田さんのノンシリーズ作品。
 
う、う~ん、いやあ、もうこの辺になると島田さんダメかもな…。という出来栄え。銀行員の息子誘拐→奥さん身代金(15万円)持って山手線ぐるぐる→息子無事生還、奥さん離婚届と共に失踪、これはいい。安すぎる身代金やトランシーバーがなぜ繋がるのかなど、島田さんらしい訳のわからない不思議さは十分惹きつけるし、奥さんの過去に何かありそう、っていう感じも(ちょっと松本清張じみてるが)読むのにワクワクさせられる。
 
で、謎の中編「ジャングルの虫たち」。ホームレスになった男性がかつて知り合った詐欺師との過去を反芻していくお話なんだけど。。。延々と詐欺の手法を書き連ねているだけで、まったく意味がわからない。。しかも「ゴーグル男の怪」で読んだのとまったく同じ内容入ってる。。これはダメでしょ。。。焼き直しじゃないのかい。面白さはあるんだけど、詐欺師の言い分にイライラするだけでメインのお話となんの繋がりもないという。。
 
後編で奥さんの過去や誘拐の目的が明かされていく。奥さんや犯人にとっては壮大で、大変な人生だったんだなあと思うけれど。自業自得感は大きいし、意味のわからない行動であることに変わりはないかな。誘拐の手段は色々考え抜かれていて面白かった。しかしそれでめでたしめでたし、って感じでもなく、東京の地下鉄などについての考察がぎっしり描かれて終わるっていう。。。なんかもう、島田さんもうお年なんだなあ、と悲しくなった。思い込みがすごいというか。。書くなら書くでもう少し人が読めるように面白く書けばいいのに。
 
というわけで残念作品。読ませる力はあるし、退屈ではないのだけど。。全盛期を知っている読者からしたらかなり期待外れかなあ。。謎の提示は誰よりも面白いのにね。