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腕貫探偵、残業中  (ねこ3.7匹)

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西澤保彦著。実業之日本社文庫。

「市民サーヴィス臨時出張所」で、市民の相談に乗る腕貫着用の男。明晰な推理力を持つ彼のもとへは、業務時間外も不可思議な出来事が持ち込まれる。レストランに押し入った強盗の本当の目的は?撮った覚えのない、想い人とのツーショット写真が見つかった?女教師が生前に引き出した五千万円の行方は?“腕貫男”のグルメなプライベートにも迫る連作ミステリ6編。(裏表紙引用)
 
腕貫探偵シリーズ第2弾。
 
すいません、前作を読んだのが昔すぎて扱った過去の事件などは銀河の彼方。おかげで、一篇目の強盗の話に出てくる人質たちのどの人が腕貫さんなのか分からなかった…。。そうかそうか、葬儀屋っぽい格好の痩せすぎの男性が。最初の語り手っぽい70代の人とごっちゃになってしまった。
 
そんなこんななのだが、腕貫探偵、ってあんま面白くなさそうなイメージを持ってしまうが実はこのシリーズ結構西澤作品の中でも面白い部類だったなあと(もって回った言い方だが文章が下手なだけで他意はない)。キャラクターはパっとしないけど、推理力はバツグンだし人柄も落ち着いていて控えめでいいし、優しさもほんのり。オヤジ令嬢のユリエちゃんに好意を持たれていることからも分かるように、なかなかのいい男なのである。
 
「残業中」の名の通り、営業?時間外やプライベートタイムに遭遇した事件ばかりなので、公務員色が薄かったのが少し残念だな。第2弾でもういきなり、っていうのも戸惑うというか。いや、どの事件も手が混んでいて面白いのだけどね。身に覚えのないかつてのマドンナとのツーショットの真実とか、不倫の果てに起きた殺人事件が実は見えていたものと全然違っていたり、マジメな教師が企んでいた5千万円の趣味の謎なんかは闇があってゾクっとしたり。結構リアリティはなかったりするしツッコミどころも多いのだが、面白さと整合性で読まされちゃうという感じ。次もこのシリーズを読もうかな。