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向こう側の、ヨーコ  (ねこ3.8匹)

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真梨幸子著。光文社文庫

一九七四年生まれの二人の「陽子」。恋愛小説家として成功した陽子は、幼い頃から、自分が辿るはずだったかわいそうな運命を生きるヨーコの夢を見ていた。一方、夫と一人息子と共に暮らす陽子は、決して贅沢のできない毎日に嫌気がさしていた。家も、職業も、生活も、全てが異なる二人の人生は絶対に交わることはなかったが―。瞬く間に世界が狂い出す、イヤミス最高傑作!(裏表紙引用)
 
うお~。真梨さんの本領発揮、女のドロドロをこれでもかと掘り下げた本格イヤミス
 
主人公は2人。「A面」「B面」と交互に2人のヨーコが現れ、ヨーコの作家としての本来の人生と、もう1つの道を選んだ場合のヨーコ(既婚、子ども2人、パート)の人生が交互に綴られる。別の道を選んでも、付き合う人間や起きる出来事はリンクするという不思議な物語。まあこれが、どちらを生きてもドロドロ。。作家の陽子は18禁のケータイ小説が話題となったが今はすっかり無名、ケンちゃんとの不倫に溺れる日々。主婦のヨーコはサロンで知り合った金城賢作と不倫の果てブログを立ち上げテレビの人気者になるがSNSでは嘲笑され騙されさんざん(「脇汗マダム」には悪いけど笑った)。
 
陽子の同級生として色々な女性が登場。バツイチ派遣の真由美やファイナンシャルプランナー久美子、セレブの裕子に売れっ子プロデューサー純子。全員独身(A面)。これがみんな、友人の皮をかぶった最低人間ばっかり。手柄のためなら友人を平気で売れるし、本人がいないところでは悪口ばかり。「自分より下に見ている相手だから優しい」ってのは真理かもなあ。それが自分より成績が良かったり、婚約したりしたらすぐ手のひらを返すというか。。堂々と言うならともかく、裏で足を引っ張ったり。まあここまでえぐい人間関係はなかなかないかもしれないが。陽子がかなりイタイというか、問題を抱えすぎてるので。潔癖症ゆえの汚部屋の理由なんてリアリティある。B面のヨーコはもっと悲惨で、夫や息子からは感謝されないしセレブ裕子と賢作にいいように利用されてかなり哀れ。有名になりたい、って感覚がそもそも分からないな。。
 
まあ真梨さんだから読者が思っているのと違う着地点と仕掛けがあって、最後は結構混乱。そのためにラストに登場人物紹介が掲載されているという親切設計。エログロもきつかったし、真梨さんますます筆が乗っている感じ。
 
ところで、主人公は自分と同じ74年生まれ。その年の名前ランキングの上位が陽子、久美子、純子、真由美、裕子なんだそうだけど。自分の通っていた小中学校同学年に、その字をあてる名前の子1人もいなかったような。。高校はさすがに多くて把握しきれてないけど。いや、多い名前だっていうのは分かってるんだけどね。ちょっと驚きだったな。