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狂う  (ねこ3.8匹)

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西澤保彦著。幻冬舎文庫。 

母校から届いた高校同窓会名簿。両親から莫大な遺産を受け継いだ鳴沢はすぐさま比奈岡奏絵の項を開いた。かつて札幌在住だった彼女の連絡先が今回は空欄だった。その瞬間、彼は強烈に憎悪し、連続殺人鬼と化した。冷酷の限りを尽くした完全殺人の計画は何のためだったのか?青春の淡い想いが悲しくも愚かな愛の狂気へと変貌する傑作ミステリ。(裏表紙引用)
 
西澤さんのエログロミステリ。「彼女はもういない」改題だそう。
 
最初は、主人公も頭のおかしい中年男性だし犯罪行為は残酷で不愉快だしと、延々これが続くのかと挫折しようかと思ったのだが…。悔しいことに(?)、面白かった。主人公の心情が狂っているのも不快な行為も、もしかしたらこういう人間どこかにいるのかもしれないなと思うとゾクっとする。犯人やだいたいの思惑は最初からわかっているのでどうということはないが、なぜ被害者の携帯電話を絶対に使用して脅迫するのか、なぜ脅迫相手は身内ではないのか、なぜ携帯電話に住所まで登録してある人物が1人でなければいけないのか、犯人の真の動機やトリックが実によく考え抜かれていて感心した。いや、感心してはいけないが…西澤さんに、です。念のため。
 
刑事役の理会もキャラが立っていたし、主人公の過去や経歴も狂うに値するだけのものがあり、真に迫っていたと思う。どちらにしても、タイトル通り狂った犯行ではあるが…本格的に主人公が狂うとすればこれからだろうな。それぐらい救いがない。