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開けっぱなしの密室  (ねこ3.9匹)

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岡嶋二人著。講談社文庫。

ユーモアと恐怖が交錯するミステリー傑作集。親友の夏美が引越したばかりのアパートで殺されてしまった。前夜泊まり込んでいた悦子は、警察の鈍い捜査にいらだち、自分で犯人捜しに乗り出した。なぜ犯人は密室の鍵を開けていったのか。表題作など、軽やかな都会派ミステリーの魅力があふれる6編を収録。(裏表紙引用)
 
 
岡嶋二人のミステリ短篇集。やはり初期は筆が乗っているというか、びっくりするぐらい面白いしちゃんとミステリしてる。どんでん返しや意外な真相が効いていて、古い作品でもきっちり読ませるなあ~と。
 
「罠の中の七面鳥
借金で首が回らなくなった宮本は経理の佐々木花子に横領の罪を着せて殺害しようと計画するが、当の本人に計画を打ち明けてしまった。宮本が利用しようとした水商売の女性「アサミ」は、実は花子だったのだ。どちらがどちらを騙しているのか、ゲームに勝つのはどちらか?ハラハラする展開。
 
「サイドシートに赤いリボン」
3つの交通事故、引ったくり、ディレクターの自殺、被害者がピンピンしている轢き逃げなど様々な事件が全て最後に繋がる。いやあ、なんとややこしい。。計画が狂った時点で諦めろよと言いたい。。
 
「危険がレモンパイ」
なんとも昭和の雰囲気漂うタイトル。映画製作をしていた大学生がビルから墜落死した。しかも大学生の顔はレモンクリームにまみれていて…。レモンクリームというだけで作風に奇妙さを醸し出しているが、奇妙なのは「イマドキの若者」だったりする。ドッキリの台本が次々変わるのが面白かった。こういう理由のない悪意が一番怖いね。
 
「がんじがらめ」
借金するために姉の部屋を訪れた男が発見したのは、ガス自殺した姉の姿だった。1年以内に自殺すると保険金が入らないことを知っていた男は他殺を偽装するが…。まあ、悪いことはできないということで。男のやったことがどうバレるか、だけで終わらないのがすごかった。
 
「火をつけて、気をつけて」
伯父の家からの帰り、放火犯を目撃した男は犯人の後をつけ、家と名前を突き止める。その犯人に伯父を殺してもらうために脅迫状を出したが、名前の似ていた隣人に届いてしまい…。なんという不幸な偶然の連続。一体誰が何を企んでいるのか最後まで分からない。
 
「開けっぱなしの密室」
アパートに引っ越してきた女性は、部屋に大家が侵入しているのではないかと疑い、友人の悦子に身代わりを頼んだ。部屋にひそみ犯人を待っていた女性だが、悦子が13時に部屋に戻ると女性は殺されていた。しかし大家には入院していたという鉄壁のアリバイがあって…。2枚のセールスマンの名刺がミソ。悦子の刑事顔負けの推理が冴える。
 
以上。
どれもレベル高くて面白かった!犯人や真相を当てられたものは一つもなかったなあ。最後まで真相が分からない作風で、毎作どんでん返しが楽しみだった。いやあ岡嶋二人やっぱすごいわ。