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満月の泥枕  (ねこ3.8匹)

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道尾秀介著。光文社文庫

姪の汐子と下町で暮らす凸貝二美男は、泥酔した公園で奇妙な光景を目撃する。白髪の老人、叫び声、水音、歩き去る男。後日訪ねてきた謎の少年は、二美男が見たのは「自分の伯父が祖父を殺した」現場だと言う。遺体の捜索を依頼された二美男は、汐子や貧乏アパートの仲間と共にとんでもない事態に巻き込まれていく―。人生に悩み迷う時、背中を押してくれる傑作長編。(裏表紙引用)
 
道尾さんの文庫新刊。
当時あまり評判自体を聞かない作品だったのでどんなものかなと思っていたが…いやいや、面白かった!道尾さんや米澤さん、伊坂さんあたりはもうハズレがないね。文章自体が好みで上手だからそれだけで楽しめる。
 
さて物語の主人公は、娘を不注意で亡くし離婚、酒飲みでダラダラ生活している中年男・二美男。姪の汐子と二人でコーポ池乃下で暮らしている。ある日二美男は飲んだくれて不良たちにボコボコにされ公園で寝ていたところ、不思議な光景を目撃する。男二人がやってきて、そのうちの1人が1人を池に投げ落としたような音を聞いたのだ。そのあと、汐子の同級生だというタケルという少年がやってきて、伯父が祖父を池で殺したというのだが…。
 
結構ごちゃごちゃはしてる。タケルの頼みを聞いた二美男は、汐子や知人の菜々子さん、コーポ池乃下のおかしな面々に協力してもらい、祭りの龍神の背に乗る飛猿役を乗っ取り、池に誘導しメレンゲで作った宝珠をぽーん、住民池の中にざぶーん、頭蓋骨ぽーん、死んだはずの祖父じゃじゃーん。さらにある人物のウソがばれ、タケル一家&コーポ住民一同総出で岐阜の博物館へ乗り込み坑道で大冒険。謎のパンダお面集団に追いかけられるわ希硫酸は浴びるわトロッコに乗るわでやんやーやんやー。インディージョーンズみたい。。
 
なんだかんだ、ある人物の登場と告白ですべて丸く収まるのだけど。いや、あんだけ大騒ぎしといてあっという間に解決。なんだったんだ(笑)。いや、面白いけど。そして二美男と汐子の同居生活が母親の登場でピンチに。こっちが一番気になった。結構いい関係だったからなあ。汐子の「幸せになってもええねんで」に思わず涙。小学生大人!伯父より大人!頼りないカッコ悪い主人公だったけど、一生懸命汐子を守る姿やさみしがりで人間が好きな一面もあって決して嫌いではなかったな。汐子効果?