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日曜の午後はミステリ作家とお茶を/Shanks on Crime and The Short Story Shanks Goes Rogue  (ねこ3.9匹)

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ロバート・ロプレスティ著。高山真由美訳。創元推理文庫

「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」そう宣言しているミステリ作家のシャンクス。しかし実際は、彼はいくつもの謎や事件に遭遇して、推理を披露し見事解決に導いているのだ。取材を受けているときに犯罪の発生を見抜いたり、逮捕された作家仲間のため真相を探ったり、犯人当てイベントで起きた『マルタの鷹』初版本盗難事件に挑んだり、講演を頼まれた大学で殺人事件に巻き込まれたり……。図書館司書の著者が贈る連作短編集!(裏表紙引用)
 
「休日はコーヒーショップで謎解きを」が良かったのでこちらも。本書はミステリ作家のレオポルド・ロングシャンクスを主人公としたシリーズもの。14編収録の短編集で、結構どれもあっさり。ショートショートぐらいの文量のものもチラホラ。シャンクスの人となりは、まあ、結構ふつう。ベストセラー作家というほどでもない感じで、仲良し(尻に敷かれているともいう)の妻・コーラはロマンス小説家。二人であちこちのパーティやイベントに顔を出すなどして(コーラがむりやり)、そこで起きた稀覯本盗難事件を解決したり、自身に起きたちょっとした人間関係のモヤモヤを晴らしたり。それも「探偵登場!」って感じじゃなくて、サラリと会話でなんとかなるふう。コーラに言わせれば喋りたがりで面倒の種を拾う夫なんだろうけど、攻撃的でもなく破天荒でもなく、ほんとにごくごくふつう。これが作品世界に合っていていいんだと思う。作品の出来そのものよりは、文章の楽しさ、ユーモアを楽しむ感じなので、まさに邦題どおりの雰囲気で読むのに適しているかと。
 
好きだったのは非合法すれすれで復讐をするのが痛快な「シャンクス、強盗にあう」、車上荒らしの末に見つかった銃の持ち主をサラリと言い当てた「シャンクス、物色してまわる」、自分の本を批判した批評家を罵倒するでもなく辛辣でもないやり方でやりこめた「シャンクスの手口」などなど。作品ごとに作者の「あとがき」がついてるのも嬉しい。