すべてが猫になる

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アリバイ崩し承ります  (ねこ3匹)

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大山誠一郎著。実業之日本社文庫。

美谷時計店には「時計修理承ります」とともに「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある。難事件に頭を悩ませる新米刑事はアリバイ崩しを依頼する。ストーカーと化した元夫のアリバイ、郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ……7つの事件や謎を、店主の美谷時乃は解決できるのか!? 「2019本格ミステリ・ベスト10」第1位の人気作、待望の文庫化!(裏表紙引用)
 
2019年ランキングもので話題となった大山さんの連作短篇集。すべてがアリバイ崩しにこだわった作品ということで。
探偵役は、祖父亡き後店を継いだという美谷時計店店主・美谷時乃。お店に持ち込まれた「アリバイ崩し」の依頼を五千円で引き受ける。事件を持ち込むのは捜査一課新人刑事。「時計が主張の根拠となっているから時計屋こそがアリバイを最もよく扱える人間」とは???????これ大丈夫?と不安になりつつ、まあ軽めのユーモアミステリと思えばいいのか。と姿勢を正す。
 
「時計屋探偵とストーカーのアリバイ」
大学教授の女性を殺害したのはストーカーの元夫?
妹が友人の連帯保証人になって二ヶ月以内に二千万返済義務ってんなばかな。なんじゃこりゃ、と思っていたらトリックも動機もかなり突飛で苦笑い。これ挫折せずに読み続けられるかなあ…と思いながら次へ。
 
「時計屋探偵と凶器のアリバイ」
郵便ポストに入れられていた使用済みの拳銃。死体より先に凶器が見つかるという稀有なケース。ものすごい凝ったトリックだったのでその頑張りに感心。
 
「時計屋探偵と死者のアリバイ」
 交通事故で瀕死の重体となった推理作家が、殺人を自白した。しかしアリバイだけは言わずに死んでしまったが…。作家のある特徴を生かした事件。思い込みはダメ、発想の転換が大事なのだな。
 
「時計屋探偵と失われたアリバイ」
アリバイ崩しではなくアリバイ探し。夢遊病の妹って怪しすぎる。。トリックがまた奇想天外というかんなわけないだろというか。無理だろ。動機の点も、こんな不利な役やらないと思う。。容疑者が昔好きだった子に似てるから疑いたくない、とは…。おい。
 
「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」
小学生時代の時乃さんの、お祖父さんとの思い出。お祖父さんにアリバイ崩しの手ほどきを受けていた時乃さんの語る「おかしなアリバイ」とは。。
これが一番良かったかな。お祖父さんのトリックが稚気に溢れているね。
 
「時計屋探偵と山荘のアリバイ」
長野県のペンションで起きた、時計塔での雪のあしあと殺人事件。アリバイがないのは1人だけ。しかしその1人が絶対犯人じゃない、の根拠が「中学一年生だから」とは??動機もあるし実行も可能だが。。アリバイのパターンがまた違うので色々よく思いつくなあと思う。犯人当てにもなっているし。
 
「時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」
一日だけしか配信しない曲を使ってのアリバイを崩せるか。一日だけ、の盲点をついたトリックだと思う。が、もし友人がそのことを知っていたらどうしたんだろう…。。
 
以上。
色々書いたが、様々なアリバイ崩しに挑戦しているので発想が豊かだと思う。アリバイ崩しだけに特化する、というのも作者のミステリ愛を感じるし。ただ、特化しすぎたかな。。メインの2人に魅力がなかった。「時を戻すことができました」の決め台詞なんか恥ずかしいし。。物語としてはどれも陳腐だったのが残念だった。うーん、大山さんってこんなんだったかなあ。デビュー作読んだ時の感触は良かった気がするけれど。正直期待外れかも。