すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

陸王  (ねこ5匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200611102637j:plain

池井戸潤著。集英社文庫

埼玉県行田市にある老舗足袋業者「こはぜ屋」。日々、資金繰りに頭を抱える四代目社長の宮沢紘一は、会社存続のためにある新規事業を思い立つ。それは、伝統の技術を駆使したランニングシューズの開発だった。世界的スポーツブランドとの熾烈な競争、素材探し、開発力不足……数々の難問が立ちはだかるなか、従業員20名の地方零細企業が、一世一代の勝負に打って出る。ドラマ化もされた超話題作、ついに文庫化!(裏表紙引用)
 
気になっていた作品をついに読めた。面白いのは疑っていなかったけど、池井戸さんらしい勧善懲悪もので期待通り、いやそれ以上のワクワクする作品。
 
下町ロケット」のような、経営者が新しいモノを作って仲間と奮闘しライバルや悪役を完膚なきまでに叩くストーリー。こういうのみんな好きなやつ。老舗の足袋屋社長・宮沢が衰退する足袋業界を憂いて日本一のランナーに履いてもらえるランニングシューズづくりに着手する。素材や形状、資金やノウハウの問題にひとつひとつ立ち向かって、時には裏切られたり勇気づけられたり。最初は覇気のなかった息子の大地が成長していく様もいいし、縫製課のあけみさん(この人一番好きだったー)や冨久子さんたちのプライドと明るさも最高。時に父親のように会社を心配するゲンさんの気持ちもわかる…。元融資担当の坂本さんとか人気あるだろうなー。こういうのを信頼、人の絆、っていうんだろうなー、と池井戸作品ならくさいことでも照れずに思える。最初からいい人ばかりじゃないのもいいよね。その代表が顧問の飯山だと思うんだけど。最初めっちゃ嫌いだったけど、シルクレイへの想いは本物。こういう不器用な人も必要なんだなあ。あと忘れちゃいけないのがシューフィッターの村野。自分がランナーだったら、こういう人に面倒見てもらいたい。人って技術だけじゃないんだなあ。
 
全読者の敵ともいえる、ライバル社アトランティスの小原と佐山が早くぎゃふんと言わないか(古い)、イライラワクワク。ちょっと大手だからって調子のんな。人によって態度変えて、ランナーへの敬意も商品への愛情もありゃしない。ばーかばーか。
現融資担当の大橋は悪役なのかどうなのかってところ。そんな悪い人でもない気がする。坂本と比べるからかな。
 
池井戸作品のパターンというものがあるから、絶対成功するって分かってはいるんだけど、ライバル社の妨害やらこはぜ屋の買収やら、手に汗握ってハラハラしてしまった。会社経営は人と人との結びつきと、情熱だということがハッキリ伝わる素晴らしい作品だった。ドラマ観れば良かったな。。