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AX  (ねこ4匹)

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伊坂幸太郎著。角川文庫。

「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐために仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。物語の新たな可能性を切り拓いた、エンタテインメント小説の最高峰!(裏表紙引用)
 
伊坂さんの殺し屋シリーズ。5篇収録の連作集。「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く第3弾。登場人物も違っていて続いているとは言えないので、単独作品として本作からでも問題なく読める。
 
主人公は殺し屋兼文房具メーカー営業マンの「兜」。妻と息子が1人。この兜が診療所に出向き「医師」から仕事を仲介?され、誰かを殺しに行くというのが各話の出だし。この兜、凄腕なのだが…最近、仕事に罪悪感を抱くようになった。
 
いつものように各話の感想を書くと途中からネタバレになるのでまとめて。
 
殺し屋というより、異常な恐妻家。サスペンスというよりユーモア小説。妻のご機嫌を取るため、妻を怒らせない受け答えのポイントなどをまとめたマニュアルまで作っちゃうほど。ここまで気を遣うって凄いな。。と思ったけど、大なり小なり、夫婦円満のコツってこれかも。自我を通すことって実は夫婦仲に亀裂を入れていいほど大切なことじゃないものね。まあそういうわけで、夫として父親として殺し屋として日々奮闘。時にはスズメバチの巣さえも撃退しちゃう。死ぬから。。仕事先やジムで友だちが出来るたびに喜んだり、自分の味方をしてくれるたび息子に抱きつきたくなったり、兜かわいい(笑)。殺し屋だけど。途中から凄い意外な展開になってショックを受けたけれど、そこからの話がまた涙を誘う。いや、ほとんど笑いだけど。記憶を捏造している妻とか、頑なにプライバシーにこだわる管理人とか。。息子の克巳も良かったなあ。よくひねくれずに育ったもんだ。伊坂作品にかかると、あんな奥さんでさえ嫌いにはなれない。登場人物みんな個性があって、背景があったりミステリアスであったりで良かった!ああ見えても兜は幸せな人生じゃないかな。殺し屋だけど。「死よりも妻のほうが怖い」………(笑)。