すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

メインテーマは殺人/The Word is Murder  (ねこ4匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200305171505j:plain

アンソニーホロヴィッツ著。山田蘭訳。創元推理文庫

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!(裏表紙引用)
 
週刊文春ミステリーベスト10 1位
2020本格ミステリ・ベスト10 1位
 
カササギ殺人事件」の作者アンソニーホロヴィッツ創元推理文庫二作目。前作がアガサ・クリスティに捧げるものならば本作はコナン・ドイルシャーロック・ホームズ)。
 
ある日突然葬儀社に現れた老婦人は、自分の葬儀の予約をして去って行った。その老婦人が当日、自宅で何者かに絞殺されてしまう。ロンドン警視庁の顧問であり元刑事のホーソーンは、その事件を自分を主人公にして執筆して欲しいと作家ホロヴィッツに依頼する。最初は気が進まなかったホロヴィッツだが、次第に事件の渦中に巻き込まれていく…。
 
ホロヴィッツの執筆原稿と、現在形の事件捜査両方で進行する変則的ミステリー。ホーソーンがいちいちダメ出しするのが面白いな。自分でタイトル決めちゃってるし。(ホーソーン登場」はどうかと思う。。)このホーソーン、11歳の息子があり妻とは離婚、差別主義者っぽい言動、読書会に参加、ぐらいしか情報がない。本人が頑なに自分のことを話したがらないのだ。だからあまりいい印象がなく、その気持ちはスピルバーグピーター・ジャクソンとの会合というホロヴィッツにとって大事な仕事を邪魔するシーンで決定的になった。事件自体は被害者の老婦人が実は10年前8歳の双子を轢き逃げし、片方は死亡、片方は脳に損傷を与えてしまったという過去が判明するなど興味深い。葬儀で柩から亡くなった子どもの好きだった曲が流れたり、老婦人を無罪にした判事の家が燃えたりと物語としての山場もてんこ盛り。(しかし飛び出しだったとしても眼鏡を掛けず視力がおぼつかない状態で運転し子どもを死傷させ、一時でも現場から逃げた人間が刑から逃れられるって法律どうかしてるぜ)
 
少々冗長なところはあったが、意外な犯人、張り巡らされた伏線、ワトソン役のピンチなどなどミステリー的な読みどころが余すところなく描かれていて合格。いけ好かなかったホーソーンも実はツンデレだったのか、と思わせるうまさ。些細なエピソードも全て関係があり、読後感はスッキリ。「カササギ~」ほどの高揚感はないが、良作だと思う。ランキング制覇については、そりゃ前作があるから読む人が単に多かった結果かとも思うけどね。