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白銀の墟 玄の月  (ねこ4.5匹)

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小野不由美著。新潮文庫

18年ぶりの書下ろし新作、ついに! 驍宗様こそ泰麒が玉座に据えた王。 だが――。戴国の怒濤を描く大巨編、開幕! 戴国に麒麟が還る。王は何処へ──。 乍驍宗が登極から半年で消息を絶ち、泰麒も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。案じる将軍李斎が慶国景王、雁国延王の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。今、故国に戻った麒麟は無垢に願う、「王は、御無事」と。──白雉は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!(第一巻裏表紙引用)
 
十二国記新刊、4分冊の大作。ずっとコレを読んでました。このシリーズにはかなり思い入れがあるので、戴国編の過去作を再読、登場人物人間関係舞台設定を頭に叩き込んで復習は完璧。
 
さて我らの泰麒&驍宗様が行方を絶ってから六年後の戴国。偽王である阿選は政治に無関心で国は大いに荒れた。人々は飢え、極寒の中凍え死ぬ。李斎は逃亡者として手配され、身を隠しながら麒麟と王の行方を追う。やがて泰麒と再会した李斎たちは手を組んで驍宗奪還を誓う。泰麒の「驍宗様が王」という言葉を信じて。
 
第一巻ではほとんどのページが「今までのあらすじ」と「十二国の舞台設定の説明」に費やされていて正直じれったい。18年ぶりの新作だから仕方ないとは思うが、復習した自分は何だったんだ…そこは分かってるから先に進んでくれよ!と思うだけで前半は終わってしまった。話が本格的に進むのは第三巻からだと思っていい。いやもう、あと半分もないのにこんだけ何もかも分からなくて、四巻で終わらないんじゃないかと思った。。泰麒が腹の内を全く見せないので少々イライラ…。阿選を王とか言い出した時にはどうしようかと思った。李斎と別行動を取ったりするので、今までの幼くて純粋だった泰麒はもういないのだなあ、と寂しい気持ちに。偽王にひれ伏したシーンはもう身が切られるような思い。
 
前半がかなりスローペースだったが、後半はかなり駆け足。驍宗が出てきた時はもう「やっと、やっと、やっとデターーー!」って感じ。主人公らメインがめったに出ないってどんな商法だ。。登場人物が多すぎるので仕方ないが、もっと正頼や英章、琅燦の舞台裏も知りたかったなあ。耶利とかまだまだ謎の人物だし。恵棟とか去思とか霜元とかめっちゃハートがカッコイイじゃん?アホの張運とかクズの烏衡とかザマミロって感じだけど。いい人いっぱい戦死しちゃったしなあ。。終わり良しでも手放しで喜べないわ。李斎は泰麒大好きのクールビューティーだと思ってたけど、土匪との約束を命がけで守ったり、結構アツイ人なんだな~。李斎の周りに次々と人が集まっていくのを見て、やっぱ人って肩書きじゃなく「人柄」に集まるんだというのがよーく分かった。最初は阿選寄りだった人も。でも兵卒やら荒民やら師帥やら道士やら神農やら、それぞれの立場によってそうせざるを得ないこともあったりするわけで。それでも、誰かの裏切り者になるぐらいなら誰でも正しい道を選ぶべきだった。誰かを守るためだったり、生きていくためだったり、職務を遂行するためだったりするけれど、自分を騙して無辜の民を殺した結果がこれなら最初から茨の道を行くべきだった。根っこにあるのが出世や欲望だけだった人物の末路を見れば明らかだと思う。このシリーズは十二国記という形を借りて我々にとっての現実のありようを描いているんだなあ。
 
というわけで一応は大満足。もっと前半のムダがなければ驍宗や泰麒をもっと堪能できただろうと思うと物足りない気もするが、これで終わりではないので良しとする。しかし阿選はもっと奥深いキャラクターだと思っていたぞ。。最後の対決が描かれなかったあたり扱いがヒドい。まあどうかとりあえず自分が生きているうちに完結して下さい。