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大聖堂の殺人 ~The Books~  (ねこ4匹)

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周木律著。講談社文庫。

すべての事件を操る数学者・藤衛に招かれ、北海道の孤島に聳え立つ大聖堂を訪れた宮司百合子。そこは、宮司家の両親が命を落とした場所だった。災禍再び、リーマン予想の解を巡り、焼死や凍死など不可解な殺人が発生する。しかし、藤は遠く離れた襟裳岬で講演の最中だった。大人気「堂」シリーズ、ここに証明終了! (裏表紙引用)
 
シリーズ第7弾、ついに完結!600ページ強の大作。
 
神に唆されて襟裳岬は本ヶ島にある大聖堂へ赴いた百合子。そこは藤衛の所有地だった。現場には神と十和田、招かれた6人の数学者たち。もうじき遠隔会議システムで藤衛の講演が開かれるというのだ。そして彼らは24年前大聖堂で起きた連続殺人事件と同じ運命を辿っていく――。
 
いつも以上のトンデモ建築物・大聖堂。焼死、凍死、刺殺、撲殺とバラエティに富んだ殺害方法と完璧なアリバイ。もうわけのわからんバカミス仕立ては相変わらずで、わからなすぎる数学談義でケムに巻かれてしまった感。まあ、ここはこういう作風だから面白きゃアリ。藤衛の講演もさすが元宗教団体の教祖って感じで凡人には理解不能。集まった天才たちは興味深いとか言ってるけど、ここまで行くと人として壊れてるよなあ。「真実は自分で掴む」とか最終的には「結果ではなく過程が大事」とか、人間として当たり前に持つべき叡智に帰結するあたり、結局はそこに到達するんだという安心感というか凡庸さだったり。最後の藤衛との対決もハリウッド映画みたいになってるし、ネクタイのくだりは超常現象の域。世界観の確立という意味ではものすごい才能と魅力があるのだから、そこがあと一歩なんだなあ。
 
最後は綺麗にまとまって満足。シリーズの執筆者の正体にも驚いたしね。ありがちかもしれないけど爽快。結局最後は恋愛なのねと思わんでもないが。。「お父さん」「お姉ちゃん」呼びの気持ち悪さだけが残念。まあでも、シリーズが見事に完結した爽快感と充足感でいっぱい。登場人物の再登場は物語上諦めざるを得ないが、またこういう理系シリーズが再開しないか期待したい。