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今昔百鬼拾遺 天狗  (ねこ3.8匹)

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京極夏彦著。新潮文庫

昭和二十九年八月、是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合い―。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省みぬ者よ。憤怒と哀切が交錯するミステリ。(裏表紙引用)
 
百鬼夜行シリーズスピンオフあっちゃん版第3弾。
 
高尾山で消息を絶った友人を探して欲しいと薔薇十字探偵社を訪れた代議士の娘・美弥子。そこで偶然美弥子に見初められてしまった美由紀は、二人で高尾山へ。しかし山中何者かが掘ったとおぼしき落とし穴に美弥子ともども落ちてしまった。一方敦子は連続で発生する女性失踪事件との関連を美由紀と共に推理する。
 
延々と、落とし穴の中で熱弁をふるうお嬢様・美弥子。男女平等や貴賎上下についての持論を展開する内容がほぼ半分を占めていて天狗があまり噛み合わない。傲慢さと天狗の掛け合いは見られるものの、いつもの妖怪薀蓄を期待する向きには少し残念。事件のほうは複数人による衣装交換がかなり複雑に入り組んで、しっかり読んでいたつもりの自分でも途中でだんだん考えを放棄したくなってきた。。真相のほうはと言えば犯人がかなりの下衆の下衆で、こりゃなんのコントだと言いたいぐらいの下劣描写。まあでも、現代でさえ、偏見や差別を心に潜ませている人間は居なくなっていないと感じるからなあ。大きな声で恥ずかしいことを言えなくなっただけで。自分だってそんな気持ちがゼロとは言えない。そんな展開の中、やはり美由紀の啖呵は気持ちがいい。
 
いや、いいんだけど…。百鬼夜行色は1番薄いかな。これなら本編のほうに力を出して下さいよと思っても罰は当たらないよねえ。