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少年たちの四季  (ねこ3.7匹)

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我孫子武丸著。集英社文庫

マンションの隣に越してきた萩原さんは大人のくせにいつもゲームばかりしている。中三の夏休み、受験勉強に飽きたぼくは、居心地のいい萩原さんの部屋に遊びに行くようになった。でも、そんな無邪気で楽しい日々も、死人が出るまでのことだった。ある日、窓の外を若い女が落ちていったんだ…。飛び降り事件は自殺?それとも他殺?思春期の四つの季節を瑞々しく描く青春ミステリ連作。(裏表紙引用)
 
我孫子さん祭り。昔の読みこぼしを。文庫で2003年発行か、ずいぶん古いな。あまり古臭さは感じなかったけども。
 
「ぼくの推理研究」
母子家庭に育つ小学生の歩の住むマンションで、OLの飛び降り事件が起きた。隣に住む萩原さんは、数日前その女性と話をしていたらしい。。悪友の大塚がジャイアンぽくてちょいイラっと。最悪の結末ではなかったのが救いだが、ジュブナイルにしては過激なお話だと思う。歩に人の心の複雑さを説く萩原さんがいい。
 
「凍てついた季節」
学校で孤独に過ごす少女・可奈子。大のゲーム好きが高じてゲームオタクの萩原さんの家を行き来するように。ある日萩原さんにもらったゲームが、学校で起きた不思議な事件とリンクするが。。親についてはこんなことだろうとは思っていたが、現実にこういう思いをしている子どもは沢山いるんだろうな。明るい未来を予感させると言い切れない終わり方がまたリアル。
 
「死神になった少年」
1話で登場した歩が高校生になって登場。大塚ともうまくやっているようだな。同じ塾に通う少年・森本は学校でイジメを受けているらしい。その森本には超能力があるというのだが…。これも子どもが考えることと思えば森本の考えは予想しやすかった。悪いことだけど、こういう手段しか思いつかないのが子どもの世界の狭さなんだと思う。本人には大問題だからね。しかし、歩、小学生の時より幼稚化してないか?
 
「少女たちの戦争」
二話で登場した可奈子が登場。学校での息苦しさは不器用な子どもには今も昔も同じ。この世界から逃げたいという気持ちは分かるけど、ここまで凄い妄想をすることになるってことは、相当闇が深いんだろう。萩原さんの説教が届いて良かった。
 
以上。
主人公が二人で交互に登場する構成。時間が経過して行ってるのが成長ものっぽくていい。でもまだまだ未熟な感じ。萩原さんのような大人が誰にでも側にいるわけじゃないから、この出会いを大人になっても大事にして欲しい。厳密な主人公は萩原さんかもしれないな。謎の人物だったけど、再登場はないのか。