すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

チヨ子  (ねこ3.7匹)

f:id:yukiaya1031jp:20190328092730j:plain

宮部みゆき著。光文社文庫

五年前に使われたきりであちこち古びてしまったピンクのウサギの着ぐるみ。大学生の「わたし」がアルバイトでそれをかぶって中から外を覗くと、周囲の人はぬいぐるみやロボットに変わり―(「チヨ子」)。表題作を含め、超常現象を題材にした珠玉のホラー&ファンタジー五編を収録。個人短編集に未収録の傑作ばかりを選りすぐり、いきなり文庫化した贅沢な一冊。(裏表紙引用)
 
1999年~2010年に雑誌掲載された短編を集めた作品集。
 
「雪娘」
小学校時代に絞殺された少女を巡って、当時の同窓生4人が不思議な現象に遭遇する話。ミステリ仕立てとなっていて、最後にサプライズがある。多少想像はつく感じだが人間の闇をうまく描いている。自分が報われないのは誰かや何かのせいではないということだけど、それを自覚してしまった時前向きになれる人となれない人がいる。
 
「オモチャ」
クミコの住む町の商店街にある玩具屋には、その2階の窓に真夜中首吊りロープが下がっているという噂があった。何もないところに火をたてるのは人間のサガかな。現れたものたちは、寂しさというよりもそういう口さがない人々に対する抗議なのかもしれない。怖くないけど。
 
「チヨ子」
長年放置されていた汚い着ぐるみに入りたくない~^^;誰にでも幼い頃大事にしていたぬいぐるみや玩具ってあるもの。私が思い出したのは紙の着せ替えセットだった。今あれと同じものに再会出来たら泣くだろうなあ。そういうものがない人が皆悪人になるとは思わないけれど。
 
「いしまくら」
公園に、殺害された女性の幽霊が出るという噂が立った。人々が面白がって幽霊見学に
行くことが問題視され…。自分が憧れている人が本当はどうだったかとか、どう変わってしまったのかなんて離れてしまえば誰にも分からない。主人公石崎が見た若い頃の残像がメインストーリーより印象的だった。
 
「聖痕」
100ページの中編。子どもの調査を対象とした調査会社というのが変わっていて面白い。未成年の凶悪犯罪とその親の葛藤。最近の宮部作品を彷彿とさせる社会的なテーマで楽しめたが、中盤からファンタジー色がかなり強くなり脱力してしまった。もったいないなあ。
 
 
以上。普段読んでいる宮部作品とは系統が違ったので戸惑ったが、怪異やファンタジー寄りの宮部さんが好みなら読んで損なしだと思う。テーマが一貫しているし、人間の情も隙なく描かれているので悪くない。