妖怪から相談を受ける『知恵の神』岩永琴子を呼び出したのは、何百年と生きた水神の大蛇。その悩みは、自身が棲まう沼に他殺死体を捨てた犯人の動機だった。―「ヌシの大蛇は聞いていた」山奥で化け狸が作るうどんを食したため、意図せずアリバイが成立してしまった殺人犯に、嘘の真実を創れ。―「幻の自販機」真実よりも美しい、虚ろな推理を弄ぶ、虚構の推理ここに帰還!(裏表紙引用)
子どもの頃神隠しに遭い、右眼と左足を失った、妖怪たちからあらゆる相談を受ける「知恵の神」、琴子。パートナーの九郎は未来を決定できる力と不死の身体を持ち、強引に琴子の彼氏にされた大学院生。…という奇抜な設定を頭に入れてから読もう(正直忘れていた…)。
設定は奇抜だが、相談される事件は結構庶民的というか、ゲスいものも。三角関係だったり…身内殺しだったり…。これを琴子の「虚構」の推理で解決するのだけど、その事件そのものの真相を暴くわけじゃないところが特徴。妖怪の相談に合うように辻褄を合わせるっていうのかな。中には虚構じゃないよねそれ、って推理もあったり。推理と言っても、「凶器の声」を聞くことができる琴子はその妖たちから真相を聞いてそれを話してるだけだったりも。
内容としては、妖が関わる中盤以降の三篇のほうが好みかな。奇怪な人形の呪いだったり、ギロチンで首を斬ったり、狸経営のうどん店が出てきたり。
各篇レベルの高さを感じさせると共に、琴子と九郎のやり取りにますます脂がのって来てる感じだな。琴子下ネタ多すぎだけど(笑)。全く琴子を気遣わない九郎はほんとに恋人なのか?と責められるけれど、いわゆるツンデレの高度なやつなんだと思う。