すべてが猫になる

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占い師はお昼寝中 (ねこ3.7匹)

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創元推理文庫


再読です。

連作短編集。
渋谷のおんぼろビルにある「霊感占い所」で除霊占い?を営む辰寅叔父さんは、
仕事よりも昼寝が大好き。美衣子は霊感もなく、一日中昼寝ばかりしている
叔父にほとほと呆れぎみ。しかし、毎回鋭い推理で事件を解決する辰寅叔父に
感心し助手として日参する。
そんな2人の所に持ち込まれる、日常のささいな事件の数々。


シリーズものでないことが残念すぎるベスト1作品です。


確かにこの作品集、霊感という看板を掲げておきながら実は霊感がなく、
(どころか信じてもいないという)占いも全てインチキ、出張もしないし
アフターフォローもない。つまりは想像で理屈をつけているに留めている作品のため、
そういう意味では物足りないかもしれません。


本作の最大の魅力はそこではない、と思えばいかがでしょうか。
辰寅叔父。一見のほほんとしており、何も考えてないようでいて実はしっかり
人情に溢れ、優しさと、傷つく辛さ、傷つける苦悩を持ち備えた主人公は、
あの今世紀最大のスター猫丸先輩(ツッコミ禁止)を凌ぐ魅力でした。
彼のインチキ占いは、謎を解くだけに収まらず、相談者達の人生、(それは日々の生活で
あったり悩みであったり人間関係であったり、)をより良くするための指針です。
それを上から諭すのでなく、あくまで傍観者、通りすがりの衣を着て茫洋と
神器(これもインチキ)を振り回す様は滑稽でありながらも高尚ですらあります。


…………おほん、褒め過ぎました。ファンの戯れ言として流していただきたい。

猫丸先輩ファンなら必ずやお気に召すことでしょう。
寒さ厳しい今日このごろ、心の芯まであったまる辰寅ミステリをどうぞ。