すべてが猫になる

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蜜の森の凍える女神 (ねこ3.9匹)

関田涙著。第28回受賞作。


15歳の誠は、姉(ヴィッキー)と、その友人と共に別荘を訪れる。あいにくの吹雪に
見舞われ、3人は天候に立ち往生していた大学生グループを泊めることになった。
決して気が合っているとは思えない険悪な大学生一行。
やがて座興で始められた「探偵ゲーム」。お遊びのはずの殺人は、翌朝現実となってーーー。


恥ずかしくなるくらいベタな設定、展開で始まるミステリ。
その「ありがち」さを救っているのはやはりこのキュートな名探偵、ヴィッキーの存在でしょう。
街を歩けば道行く人々が撮影スタッフの姿を探してしまうという風貌、
頭脳明晰で、誰からも好かれてしまう愛すべき女子高生探偵は魅力満点です。
キャピキャピしていない冷静さと、頭の回転の良さげなセリフも好感度大。


うまいな、と思ったのは後半挿入される個性的な「ヴィッキーからの挑戦状」。
比喩のおかしさ、文章の稚拙さ(私はそんな言う程悪いとは思いませんが)に
作者自らが触れている点も、15歳の少年が描いた文章として「逃げ」ているのではなく、
自虐によるテクニックともとれてしまいます。それは、意識的に古い漢字を頻繁に
使用していることの矛盾を鑑みても妥当な解釈ではないでしょうか。


惜しむらくは、本格ミステリとして必要な「意外性」が皆無なこと。
故意かと思わせるほどの犯人のわかりやすさと、たびたび記述される「何かあるな」という
思わせぶりな文章。
その原因もわかりやすい。

伏線を伏線らしく描くのはやめましょう。