すべてが猫になる

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子供たち怒る怒る怒る (ねこ4匹)

佐藤友哉著。新潮社。


6編収録の短編集です。

鏡家サーガシリーズ以外のこの作家の本を初めて読んだのですが、

………………ついていけない………………………。

いや、むしろ、ついて来なくていいよ、と言われているような気すらするのです。。

エログロ、虐待、疎外、偽善者、無理解、不条理、無感情、
それでも、それぞれの主人公達の時間は間違いなく進んで行きます。
本作に登場する「子供たち」は、同情も、共感も、反感すら覚えないほど
無色で、周りの悟りきった大人達よりも達観しているよう。
いや、諦観の方かな。

決して正しくはない、むしろ間違っているこの恐ろしい「子供たち」を描くことによって、
「大人」の狡猾さ、計算高さ、無力さが浮き彫りにされている、というのは
穿ちすぎでしょうか。


筆力不足により物語への完成までは至らなかった感のある作品も数点ありますが、
伝わるものがあるのも確か。
それが万人に向けてのものではなくても。

ただ、間違いなく言えるのは、対人関係については
価値観や人生経験の違いを理由にコミュニケーション放棄で遮断してしまう自分には、
空想に逃げているだけともとられかねない本作が妙に愛しいのです。

人生は、逃走か、闘争か。
最終話で一人の少女に課せられたのは、選択することではなく、
自我の覚醒だと解釈するならこの結末は一級品。

この物語の先がどうなるかなんて知らなくていい。