すべてが猫になる

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クレイジー・クレーマー (ねこ4匹)

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黒田研二著。実業之日本社ジョイ・ノベルス。


書き下ろしサイコ・ミステリです。

大手電器店勤務、エレクトロ課マネージャーの神山は、日々「かいとうX」と名乗る
万引き犯と、悪質なクレーマー岬の対処に翻弄していた。
岬は、ある日クマ型ロボット「テディ・バディ」をレンジで温めたら死んだ、と
クレームをつける。神山の我慢は限界に達し、遂に一線を越えてしまった。
そして、その日から何者かの悪質な悪戯が始まりーーーー。


心理ホラーと考えるなら、少し岬の異常度や神山の恐怖感が物足りなくもないです。
つい、自分の愛するこういう描写に長けた作家と比べてしまいました、内心。

しかし、このページ数でここまで伏線とストーリーを詰め込められれば上等。
ここまで描くか、というグロ描写といい、インターネットの浸透による
口コミの恐ろしさといい、決して趣味がいいとは思えませんが光りますね。
ついさっき心理描写が物足りないだのうんぬん書いた矢先なので矛盾した発言かも
しれないですが。。

物足りないと言ったのは行数という直接的な意味でなく、ところどころで見られる
「ラジオの『地方』が『痴呆』に聴こえて」のような「さらり」とした発想を
そっちにも持って来て欲しかったかなあという。。

しかしこの作家にページ数は必要ないかもしれません。
うだうだとくどい心理描写を続けるまでもなく、
「その染みの中から、今にもスプレー缶が落ちて来るような気がして」
などという一行で全てを表現してしまえるのですから。


トリックについては、完敗いたしました。
あんなに伏線があちこちちりばめられていたというのに、まるで気付かなかった。。。
大きく分類するなら、これは決して目新しくもないはずです。

「騙された」というより、盲目的になるほどストーリーに食いついていた自分に乾杯。
くろけん万歳。

現在でのお気に入り堂々1位作品です。