すべてが猫になる

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真っ暗な夜明け (ねこ4.3匹)

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氷川透著。第15回受賞作。


ミステリ作家志望の氷川透は、学生時代のバンド仲間と同窓会で再会。しかし、飲み会が
お開きになって外で別れたはずのリーダー、和泉が駅構内のトイレで撲殺死体で発見される。
人の出入りなしの不可能状況、容疑者は仲間全員。そして仲間の自殺ーー。氷川は犯人を
突き止められるか!?


島田荘司氏絶賛の本作。
いやはや、現既出のメフィスト賞の未読作品も残りわずか。
ココまで来て、まさかこんな素晴らしい突出した作品を読めるとは夢にも思っていませんでした。

ケチのつけようがない、不可能状況設定、人物描写、文章力に加えたユーモアのセンス、
専門分野の知識、そして隙のない論理による驚愕の真相、さらに物語としての完成度。さらに
さらに、クローズドサークル設定でないのでリアリティに気を取られたりもしません。



デビュー作ゆえ、多少文章がカタい箇所が見受けられます。小説は最初の数ページが命!
出だしから登場人物の色を思い切って出していれば入りやすかったんじゃないかと。

あと、探偵役の名前を「氷川透」にしない方が私は良かったと思います。
どうしても、探偵役を作者とイコールにしてしまうと、、かっこいい記述をされた時に
痒いというか。。「御手洗潔」「浅見光彦」「メルカトル鮎」のように架空のスターを
作り出してくれた方が私は入り込めるんですけどね。



最初に「リアリティ」と書きましたが、本格推理小説でたびたび論争される、登場人物が
ステロタイプであることへの不満。

仲間うちでの連続殺人、しかも犯人がその中にいるともなれば、犯人を名指しすることへの
葛藤、身内を庇いたい一心ゆえの警察への虚偽証言……。人間が描けていないと、
動機や探偵、犯人、登場人物の心理→行動に説得力が出ません。
その点もご期待ください。

こういう結末を、「読後感が悪い」とは言わない。