講談社文庫。
おなじみ国名シリーズの第二弾です。
前作「ロシア紅茶の謎」は短編集でしたが、本作は長編になります。
推理作家アリスは、スウェーデン館と呼ばれる雪のログハウスに招かれた。
そこで遭遇した、離れで起きる犯人の足跡だけがない殺人事件と美人画家姉妹にふりかかる
惨劇とはーーー。
はい、これ、誰に何と言われても私は好きです。
この美しい館のたたずまい、美しい姉妹、そんな設定に色を添える雪の風景。
詩的です。そして、登場人物のドラマが哀愁に満ち満ちて、読後思わず「ほぉっ」となります。
有栖川氏は短編でも人間が描ける作家ですが、長編でもその筆致は衰えません。
こんなことばっか書いてると、「あんたじゃあミステリじゃなくてもいいやん」と
思われそうですが、いえいえ。
有栖川氏は、「歌って踊れるミステリ作家」として好きなんですよ。(意味不明、こわれた)
登場人物達の人間ドラマと、ミステリのロジックが見事に息の合った舞を舞っているのが
氏の特徴。(駄作もあるが)
簡単に言うと、それぞれが孤立していないのです。
小説を読んだなあ、という満足感に浸れるといいましょうか。
アクロバティックな誰も見たことのないトリックを書くのもアリですが、
有栖川氏はあくまで正統派を貫き通していて男らしい。
えっ?トリックはパクリだろうって?
んもー、人がせっかく浸ってるのにそんな水ささないでまあまあ。
……ちょっと変えてるじゃん。(ぼそっ)