すべてが猫になる

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インシテミル  (ねこ3.7匹)

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米澤穂信著。文藝春秋


大学生の結城は、本屋でアルバイト情報誌を読んでいた縁で須和名という美しい女性と知り合いになる。
彼女は、指一本分の「滞り」があってアルバイトを探しているという。須和名が目に留めた
「時給一一二〇百円」の人文科学的実験のモニターの仕事。破格の条件に怪しいと思いながらも、
結城は車欲しさと須和名会いたさに応募。そして現場である「暗鬼館」に集められたのは、
12人の人間。やがて彼らは、自分達がとんでもない殺人ゲームに参加してしまった事を知る。




毎度の事ながら皆さんに出遅れること半年。それほど絶賛の声を聞かなかったので、購入はやめて
図書館に予約しました。やっと来た、という嬉しさからいつもよりも読む姿勢がノリノリです。

こういうゲーム感覚のミステリーで、自分が楽しめるというのは久しぶりです。これを知っていれば
ゆきあやマニア上級者なのですが、わたくしはあまり殺人ゲーム形式の小説は好きではありません。
物語的な面白さを期待出来ないのと、「いや、だからそもそもなんで参加するんだ?」という
ものすごく現実感のある疑問が拭えないからです。
しかし、本書は何の問題もなく楽しめました。デスゲームというより、新本格ミステリーという
スタイルに寄っている作品だからだと思います。自分は本格ミステリーの登場人物は
ステロタイプで構わないのです。動機にあまりにも個性があると(狂人だったり)
謎解きの面白さが半減すると感じており、むしろ型に嵌まった動機の方が逆に万人から納得感を
得やすいと考えます。しかし、年齢や社会的地位、職業、「明るい」「神経質」「上品」
「短気」などの性格はきちんと設定されていなければいけません。
そもそも、結城と須和名がもっときちんと描かれていたら絶対嫌いだったと思う^^;

うだうだ書きましたが、人物よりも「ゲーム設定」が面白かったので、矛盾しますがそれが
救いと言えば救いだったのかもしれません。それぞれに用意された凶器と「メモランダム」の
マニアックさ。無機質な空間を象徴する「ガード」の存在。密室を不可能にする
非施錠に徹底された部屋とジャグジーの計算された温度。
すべてが初めて読むシチュエーションで、楽しめました。
難を言えば、文章がするりと頭に入って来ない作風だったので読むのに苦戦したことでしょうか。



で。読み終えましたが。

・・・う~ん(ーー;)。。。結局なんだったんだろ。。
ラストに向かうにつれ、テンションが上がる……なんてことはなく、淡々と解決してしまい。
謎の人が謎の人のまま終わっちゃったぞ?
犯人の具体的な動機が示されなかったぞ?
ゲームの主旨が明かされていないぞ?(もしかして主催者は「謎の人」?かとも思ったんですが)
「深み」は求めていなかったけど、「理屈」の面でもこれだけ消化不良度が高いと、ちょっと
「傑作です」とは言えなくなったなあ。