すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

江戸川乱歩座談  (ねこ3.8匹)

江戸川乱歩著。中公文庫。

戦前、孤高の「人嫌い」として知られた作家・江戸川乱歩は、戦後、日本探偵小説界の名ホストとして活躍した。 森下雨村横溝正史ら雑誌「新青年」の立役者たちから、小林秀雄幸田文ら文壇の著名人まで――探偵小説の魅力を共に語り尽くす、夢の饗宴! 乱歩の参加した主要な座談・対談をセレクトした文庫オリジナル。(裏表紙引用)
 
乱歩生誕130年として発行。「文学時代」「ぷろふいる」などなどに掲載された乱歩座談会を種々色々寄せ集めたもの。結構前に買っていてそろそろ読んでおくかと腰を上げた。大下宇陀児甲賀三郎小栗虫太郎海野十三城昌幸などなど豪華メンバーぞろい(正直、甲賀さん横溝さん以外は読んだことのない方ばかりだが)。
 
探偵小説のこれから、探偵小説を好む人種とは、探偵小説とは、などなど当時の探偵小説を代表する書き手たちの探偵小説遍歴をまじえての座談会は勉強になるし時代を感じさせる。ヴァン・ダインは五流だアクロイド殺しは駄作だの、昔のおじさんたちの自由な発言ぶりに苦笑。しかし乱歩先生はそういう意見に全く同調はせず、穏やかにいなしている感じで好感。本当に人嫌いなのかな?と疑うぐらいコミュ能力は高くていらっしゃる。まあホストだしね。
 
紹介されている探偵小説には短篇や海外ものが多く、今の時代に読んでみるか、と思えるものではないが知識量の多さに圧倒される。探偵小説の未来を諦めていない姿勢も立派で、乱歩先生に綾辻さんや今村さんなどなど新本格以降の探偵小説を知っていただきたかったなあと思う。きっと目を細めて若手の躍進をお喜びになっただろう。