すべてが猫になる

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倒錯のロンド (ねこ3.7匹)

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講談社文庫。

「倒錯シリーズ」の第1弾。
ひっさびさに読んでみました。当時必死必死に理解した内容ですが、ほぼわかっていて
読むと面白さが2倍。

と、ここまでカタカタ書いて思考がストップ。
折原氏の作品の感想って、、、どう書けばいいんだろう、ところで。
この事件の真相は実はこうこうこうでびっくりしたなあ、とか
難解すぎて理解しがたかった方のために「だからココはこうで、でも実はココはこうで」
と解説するのもいいかもしれないが(自分の中でさらに復習するためでもある)、
それじゃわざわざ私ごときがこんな記事を作る意義がない。
もっと上手な方はたくさんいるしね。

ということで、語ってみる。↓(ネタバレ少々。ご注意)




わざわざ氏のカテゴリを作っていることでもおわかりのように、
自分は折原一という作家が好きだ。(いきなりコクる^^;)
二転三転、四転五転する展開、追いつめられて行く登場人物達、遊び心満載の仕掛け。
本編、あとがき、文庫あとがき、解説と、一体どこで幕を閉じればいいのか混乱する。
(基本的に自分はあとがきを積極的に読む方ではないんで)
氏の場合、手法がわかっているにも関わらず引き込まれるのは、文章や構成のうまさだけでなく
心理描写が卓越しているからだろう。
ここで反論が出るかもしれない。
人気キャラを持ってるわけでもなく(黒星ものは氏の中では異質なのではぶく)、
特別個性のある人物を描いてるわけでもなく。いたって平凡も平凡な主人公たち。

山本安雄なんていうありふれた名前も、それを如実に現していると言える。
しかし、だからこそ共感ができる。
共感できてこそトリックが生きる、という氏の分析は間違いなく正しい、と
本作をじっくり読んでわかった。


ミステリを読む上で、「騙されたい」とはほとんどの読者が願うことの一つ。
ゆえに、「最初から『叙述トリック』とわかっている作家なんて」と思うべからず。

トリック、技巧を売りにしていながらもストーリーを楽しめる作家を私は他に知りません。


(しかし、乱歩賞に漏れたのは納得できてたりして)