すべてが猫になる

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嘘つきジェンガ  (ねこ4匹)

辻村深月著。文藝春秋

見栄、不安……ほんの出来心から積み上げてしまった嘘。一線を越えたら、もう戻れない。騙す側、騙される側、それぞれの心理を巧みに描く小説集。(紹介文引用)
 
詐欺にまつわる3つの物語。
ああ、これぞ自分が読みたい辻村さん、という感じ。適度に黒くて、でも最後には希望が残る。どれも救いがたい展開のものだけど、雨降って地固まるというか、落ちたら落ちたなりに再生はできるものなのだなー。全部面白くってあっという間に読み終わった。
 
「2020年のロマンス詐欺」
闇バイトと知らず、ロマンス詐欺に手を染めてしまった普通の男子大学生のお話。なるほど、足抜けできないようにされてしまう仕組みなのだな。知らない人からのメールに返信する人が一定数いるというのも、「びっくりするほど自分に夢を見すぎ」という言葉でしっくりきた。騙している側には同情の余地がある反面、騙されている主婦の方が哀れで読んでいることに罪悪感が。。人の恥を読まされているみたいで。詐欺がバレてお縄かと思いきや、まさかネットを越えてこんなリアルな展開になるとは。。最後の2人があんなに打ち解けあうのが理解不能。なにがどうあれ傷害犯だぞ。。
 
「五年目の受験詐欺」
夫に内緒で次男の中学受験の特別事前受験(100万円)に申し込んだ多佳子。ママ友の紹介で「まさこ塾」という教育コンサルタントが経営する塾に通い、甲斐あって次男は受験に合格した。しかし五年後の今、ある主婦から「まさこ塾は詐欺だ、お金は学校に渡っていない」と知らされて。。。
正直言うと、キレ散らかした夫の方に自分の心情は近いのだが。。お金を払ってしまったこと、騙されてしまったことより、次男を信じてあげられなかったことに対する後悔が強いんだろうと思う。次男がいい子で良かった。ウチも兄のほうが人当たりも頭もよく自分よりいい学校行ったから身につまされるわ。次男と同じようなこと思ってたよ、私も。。親は自分より兄のほうが可愛いってね。
まあ、このお話は多佳子は被害者だからね。これぐらいでいいんじゃない。夫は他人だもん。子どもが味方って素敵だと思う。
 
「あの人のサロン詐欺」
いやあ、びっくり。この3篇目の詐欺だけは、聞いたこともないしそんな詐欺があるんだと驚いた。オンラインサロン詐欺っていうのかな。ある人気漫画の大ファンの「子ども部屋おばさん」の紡は、SNSのつぶやきが誤解されて原作者本人だと思われてしまう。やがて会費を集めて創作講座兼ファンの集いを何度か開催し、原作者本人だと偽って活動を続ける。
いやいや、親、信じるなよ。。
というか、高校生の頃、いた。ある人気アイドルの知り合いだと豪語してツアートラックに一緒に乗ってついていったよと言ったり自分の彼氏は春山洋志という名前だと言ったり(いやそれホットロード。。)。。高校の友だちの彼氏が30~40くらいのおじさんで、会わせてもらったら自分は光〇〇NJIの知り合いで、会うたび諸星くんに電話しようか?とか言う人だったことも。。。結局一度も電話してくれなかった。
虚言癖なんだと思う。普通相手にしないんだけどねえ。。
まあネット内はね。まかり通るかもね。
 
それにしても、バレ方にビックリした、悪いけど笑ってしまったわ。ありえるよなあ、と思ったりして。こんな和解?みたいなこと普通しないとは思うけど、、親とはどうなるんだろう。数ある世の中の嘘の中で1番恥ずかしい嘘だと思う。
 
 
以上。
面白くって長い感想になってしまった。
スカっとするわけでも、感動するわけでもないけれど、おさまるところにおさまる、物語としてはそれなりにまとまるという感じ。騙すほうも騙されるほうも、いきつく先は地獄かもねえ。