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暗闇の囁き (ねこ3.8匹)

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綾辻行人著。講談社文庫。

黒髪を切られ変死した女性家庭教師。そして従兄とその母親も眼球と爪を奪われて死んだ。謎めいたほどに美しい兄弟のまわりに次々と起こる奇怪な死。遠い記憶の闇のなかから湧き上がってくる“囁き”が呼び醒ますものは何か。『緋色の囁き』に続く異色の長編推理“囁き”シリーズ第二弾、講談社文庫に登場。(裏表紙引用)
 
20.2.1再読書き直し。
 
囁きシリーズ第2弾。
 
白亜の洋館で暮らす美しい兄弟・麻堵と実矢。躾に厳格な父親の円城寺、病弱な母親。そして兄弟が森の中で共に遊ぶ「あっちゃん」という謎の子ども。大学生の拓也は卒論のために伯父の別荘を訪れたが、近所に住む円城寺兄弟に懐かれてしまう。行方不明になった親族、事故死した円城寺の妹、次々と起きる館の謎に次第に拓也は興味を惹かれ…。
 
雰囲気一発の物語。ストーリーの行き着く先は想像がつくが、なかなかに派手でミステリアスなエンディングを見せる。推理ものとして括られる小説ではないと思う。不気味な「あっちゃん」の囁きの正体や拓也と館との関連など意外性もあり、ホラー仕立ての恐ろしさと共にどちらも楽しめた。館の人々も「場をかき回す役」「雰囲気を盛り立てる役」「中立的立場」としっかり線引きされているのがいい。兄弟の悪魔的無邪気さも嫌いではないし、美しく黒いミステリーとしてシリーズでは一番。