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緋色の囁き (ねこ3.5匹)

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※16.3.30再読、書き直し。

綾辻行人著。講談社文庫。

「私は魔女なの」謎の言葉を残したまま一人の女生徒が寮の「開かずの間」で焼死した。その夜から次々と起こる級友たちの惨殺事件に名門女学園は恐怖と狂乱に包まれる。創立者の血をひく転校生冴子は心の奥底から湧き起こってくる"囁き"自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののく。「囁き」シリーズ登場!!(裏表紙引用)



「囁き」シリーズ第一弾。

舞台は規則の厳しい厳格な聖真女学園。主人公は転校生の冴子で、自分が校長の姪だということを知らされたばかり。両親だと思っていた人は両親ではなく、過去に本当の両親は姉とともに事件に巻き込まれて亡くなっているという。自分の素性すらわけのわからないまま、多感な時期を寮生活に費やす冴子。時々挿入される誰かの「過去」が緋色と囁きのイメージでもって繰り返されるのが効果大。「赤」が重大な記憶の手がかりとなっている作品で、繰り返される凄惨な殺人事件の血のイメージと重なり合う。

館シリーズのように探偵役や推理を披露する場がないというだけで、ホラーミステリーのジャンルに属すると思う。犯人の意外性や謎の闇の深さなど読みどころは多々。推理ものというには少しヒントが足りず、少々ズルいかなと思える部分が無きにしも非ず。

女性ばかりが登場する作品内で活躍する唯一と言っていい人物・高取兄のキャラクターが味となっていた。今読むには若干台詞まわしなどが古いが、雰囲気作りにはいい意味の逆効果があったかな。それほど好きでもないのだが嫌いでもないという昔の印象は今も変わらず。