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時計館の殺人  (ねこ4.4匹)

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綾辻行人著。講談社文庫。

館を埋める百八個の時計コレクション。鎌倉の森の暗がりに建つその時計館で十年前一人の少女が死んだ。館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。死者の想いが時計館を訪れた九人の男女に無差別殺人の恐怖が襲う。凄惨な光景ののちに明かされるめくるめく真相とは。第45回日本推理作家協会賞受賞。(裏表紙引用)



2017.4.9再読。

「十角館」の事件から三年後、河南と島田が久しぶりに再会する。今回の事件は島田と河南は同行せず、取材として「時計館」に宿泊するチームと事情で取材チームから遅れた福西&島田チームとの二部構成で物語は進む。霊能者を招いての降霊会に始まり次々と発生する殺人。時計にまみれた館で時計に殴り殺されるという衝撃的な事件が連続し、残された人々は次は自分ではないかと恐れ怯える。この館では過去に7人もの人間が亡くなっており、残された少年も精神を病んでいる。暗く澱んだこの館にどんな過去が隠されているのか。

トリックがあまりにも衝撃的かつ悪魔的で有名な作品である。十角館同様、登場人物が内部から扉を開けて驚愕するシーンは印象的で、自分がその立場だったら狂わずにいれる自信はないほどだ。終盤で全てが崩壊する仕掛けも完璧だろう。個人的には人があまりに死にすぎるミステリがあまり好きではないのと、動機は同情に値するものながらも見当違いに感じるところがあった。それでもミステリ界に残すべき傑作であるには違いないと思うが。