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人形館の殺人 (ねこ3.8匹)

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綾辻行人著。講談社文庫


父が飛龍想一に遺した京都の屋敷――顔のないマネキン人形が邸内各所に佇(たたず)む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読み(カウントダウン)はすでに始まっていた!? シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第4の「館」、新装改訂版でここに。(裏表紙引用)


2017.2.9再読。

館シリーズ第4弾、異色作と呼ばれる作品。

個人的に初読時はあまり良さを見出せなかったが、再読するとそれほど悪くもない。いいと思わなかった理由は犯人の正体だったのだろうなと思うが、今の自分の感覚ではもう怒るを通り越して「定番」の真相としてカテゴライズされているものだ。伏線があったか、辻褄が合っているか、あとは単純に心情的に理解出来るか、ぐらいしか評価材料はない。その点では本書は及第点だろう。

もう1つ、気に入らなかった要素に「身体の一部が欠損したマネキン」という小道具がある。言うまでもなく島田荘司氏の代表作から失敬したものであり、本書でも作品名が登場する。雰囲気立てとしては好みだが、オリジナリティが欲しい。

しかしその2点を除けば、人間ドラマとしての悲しみもあり仕掛けもありで決して大きく見劣りする作品ではなかった。