すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

黙の部屋  (ねこ3.7匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200830192457j:plain

折原一著。文春文庫。

古物商の店先で偶然見つけた一枚の奇妙な絵。美術雑誌の編集長・水島純一郎はその謎の画家、石田黙に魅せられ、ネットオークションや関係者を訪ね歩くうちに、不可解な事件に巻き込まれていく。誘拐、監禁、そして謎の招待状…。虚実の皮膜を往還する叙述トリックの名手が、渾身の筆が描く美術ミステリー。(裏表紙引用)
20.8.30投稿。
 
折原さんの美術ミステリー。いつもの折原作品とはかなり違う雰囲気。実在した画家をモデルにしている作品で、カラーで絵も紹介されているのでそういう方面でも楽しめる。もちろん叙述ミステリーではあるのだが、いつもほどそれは発動していないというか。監禁されている記憶喪失の画家(石田黙??)の章と美術雑誌編集者・水島が石田黙の絵に取り付かれ彼の絵を収集するようになり画家自身のことも調べ始める章と、幕間として石田黙の妻(??)の章と。登場人物も少ないのであまり混乱はない。ただ、サクサク読めるかというと…500ページ弱の長編でもあるので、体力はいるかも。
 
石田黙の画風が結構不安な感じで自分好み。水島が夢中になるのも分かる気がする。すべてカラーでないのが残念だった。(まあ、検索すればよいのだが)一応恋愛も絡んでいるが、みんな手近なところで済ませているなあと思ったり。。とにかく芸術家のあやういメンタルを描くのに、折原さんという作家はピッタリだなと。ミステリー的には普通の作家のどんでん返し、という印象しかなかったがこれはこれで。