すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

逃亡者  (ねこ3.7匹)

f:id:yukiaya1031jp:20200803195805j:plain

折原一著。文春文庫。

同僚だった女に持ちかけられた交換殺人の提案に乗り、一面識もないその夫を殺した罪で逮捕された友竹智恵子。だが、警察の不手際から脱走に成功した彼女は、整形手術で顔を造り変え、身分を偽り、逃亡を続ける。時効の壁は15年。DVの夫、そして警察による執念の追跡から、智恵子は逃げ切ることができるのか。(裏表紙引用)
 
20.8.3投稿。
 
570ページ強の力作。結構しんどいかなと思ったが割にスラスラ読めた。本作は、福田和子事件を下敷きにした逃亡劇。知人の女とお互いの夫を殺す交換殺人の約束をした智恵子はターゲットを殺害するが、相手の女に裏切られてしまう。15年の時効を逃げ切るために全国を飛び回る智恵子。追う刑事とDV夫。果たして智恵子は逃げ切ることができるのか。
 
智恵子の夫が典型的なクズDV男なので、読者のほとんどは智恵子を応援しながら読んでしまったのではないだろうか。青森、滋賀、新潟、神戸、福山、広島と北へ南へ飛び回り、その地で知り合う人々。彼らがワケありの智恵子をかばったり隠したり、あとあとインタビューで「逃げ切って欲しい」と話してしまうのは、智恵子がとても殺人などという大それたことをしそうにない好かれる人柄だったから。とはいえ倫理観がどこか狂っているのは間違いないし、復讐のために交換殺人の相手のところへ乗り込んだりと軽率な行動も目立つ。美容整形が失敗したっていうのは酷い話だけど。<幕間>で関係なさそうな通り魔事件が挿入されたり、捕まったあとと思われる智恵子のインタビューが混ざったりと、いつも通り何か仕掛けがあるなと気をつけつつ。。
 
とはいえ、結構力技というか。強引というか。意外性は十分だけれど、最後はバタバタバタと怒涛の真相が明らかになって口ポカーン。。。な、なるほど。凄い展開だけど、安岡刑事は本当にこれでいいのか。。