中島望著。講談社ノベルス。(文庫出ないのかなあ。。)第10回受賞作。
作者は国際空手道連盟極真会館所属。本作はその館長、松井章圭さんの推薦文つき。
悪の巣窟の高校へ転校してきた一見ごく平凡な少年、逢川総二は、実は極真空手の名人だった。
恒例の度を超えた「転校生いじめ」の洗礼を受けるはずの儀式で、総二は常人の域を超えた
強さで不良達をのしてしまう。それが悪運の始まりだった。
中国拳法、ボクシング、少林寺拳法、柔道、空手、剣道。それぞれ異種の達人が、復讐のために
総二へ「果たし状」をたたきつける。激闘は幕を開けてーーーー。
これはミステリではありません。トリックもどんでん返しも推理も謎もなーーーんにも
ありゃしません。高校生ならではのすっぱいラブストーリーはありますが。
時代設定は一昔前かな?スケバンとか出てくるし。
とにかく男くさいストーリーです。感動も驚愕もないし、ただこの物語の勢いに圧倒される、
そんな作品です。(褒めてるんですよ)
私は格闘技にまっっったく興味がないんですが、楽しく読めました。
それは、登場人物を全て高校生にしたことにより、この世界に興味がない人にも
なじみやすくなった、ということかもしれません。
あと、試合という設定でなかったのも一因でしょう。(言ってみればただの殺し合い。日本刀とか
持ち出してる人が出て来て殺戮がはじまり結構無茶苦茶)
はっきり言って、もうそれだけの話なんですよ。主人公に暗い過去とかありますし、
格闘家として人格に少し問題があるんですけどあまりストーリーとしてそこが機能してないです。
「この出来事を乗り越えて成長する」とかもないですし。
まあそこはそれぞれ想像しましょう。
ラストがちょっと不満といえば不満ですが、作家の「極真」への思い入れと、好きなことを
描ききった、という情熱がこの作品のすべてから感じられました。
時代の古さによるダサさが男くささに拍車をかけているのがすごいし、「ありえねえよ!」という
展開、設定に妙な説得力がある。
「ライトニング・カッター」だの「ブラッディ・エンジェル」だの、次々出て来る痛快な名称に
笑ってるヒマなんてないですよ。