三津田信三著。講談社ノベルス。
菊池秀行氏による「三津田信三よ、貴殿は人間か」というキャッチコピーが怖い（笑）、
怪奇小説です。
編集者の三津田信三は、「怪奇小説」の執筆を目論む。その一方、あるホラー大賞に彼の名で
身に覚えのない原稿が応募されていた。
偶然にも不気味な人形荘に住むことになった三津田と、連載の始まった「怪奇小説」との
二重構成で成されるとっても怖いお話。。。
「愛読者」が出て来たりホラーの定番である「家」をモチーフにしていたりと、設定そのものは
王道といえるかな。「ミザリー」を彷彿とさせます。
全体的にはホラーというより怪奇小説とミステリの融合でしょうか。
自分は、人間の奥深い心理などを重点においてホラーを楽しむタイプなので、過去に一家惨殺事件が
繰り返されたという「家」そのものの恐怖はあまり感じとれなかったです。「呪い」ってのもね。
ありがちというか。
それよりも、作中で三津田が愛読者に語る江戸川乱歩、横溝正史の講釈（それがやたら長い。ストーリーにあまり関わってないような）が楽しめました。講釈というほどのものでもないですが。ただの
乱歩おたく（笑）
作中作の「怪奇小説」も少年が主人公になっていて、不気味な人物、津口十六人の存在も
非常に謎で。面白いのは面白い。
怪奇小説作品が多数文中で紹介されているのもおいしいところ。
と、なかなかミステリとしても読ませてくれる作品でありながら、それがラストで急ぎ足な展開に
なってしまってるのはどうして？なんだか別物みたいになっちゃっていてもったいないなあ。
三部作らしいので、このシリーズぼちぼち追って行きたいと思います。でないとこの作品だけでは
何を描きたかったのかがあいまいですっきりしないかも。。。
この「妙」さ、あちこちでばらまかれる怪奇小説や映画の蘊蓄、独特なのは間違いなく
お薦めしたくもあり出来れば遠ざけて欲しくもあり。。。
