すべてが猫になる

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奪取 (ねこ4.9匹)

真保裕一著。講談社
日本推理作家協会賞山本周五郎賞W受賞作。


主人公は道郎という22歳の青年。友人の雅人が悪徳金融から作った1260万円という借金を返すため、偽札作りに
悪戦苦闘する物語です。


うーん、こんな面白い本に今まで手をつけていなかったとは。
サスペンスとハードボイルドは苦手なので、あまり手を出さないのですが
これは今までの自分のこのジャンルに対する価値観がひっくり返りました。

こういうタイプの小説をまるきり読んでないわけじゃないんですけど、ある程度の
凝り固まったイメージがあったんですね。簡単に言うと、勧善懲悪でないものに抵抗が
あったのです。それをフィクションとしての空想として割り切れず、虚構と現実で
板ばさみになっていたのですよ。。

しかし、これは文句無し!
まず、文章が面白く、偽札作りの過程が専門的でありながらもさくさく読める。
登場人物が犯罪に手を染めていながらも、決して「ワルの持論」におさまっていない。
善悪を飛び越えて、人間を魅力的に描ききっている。つまり、文章がうまいということ。
ところどころユーモアも光っていて、セリフの一つ一つがかっこいい。
先を読ませずぐいぐい展開していく力量はただものではない。

そして、期待のラストがもう拍手もの。
ああ、こういう展開があったのかと。笑える、泣ける。
成功か失敗か。どっちの結末にしても、読者の半分は批判するだろう。
しかし、これなら。
妥協ではなく、両者最高のクライマックスではないですか?

で、オチが。。(くっくっく)