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リカ (ねこ3.9匹)

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五十嵐貴久著。幻冬舎文庫。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。


平凡な会社員、本間が出来心で始めたインターネットの「出会い系」サイト。
ある日本間が出会ったのは、「リカ」と名乗る自称看護婦。最初は好感を持っていた本間だが、
だんだんこの女の異常さに気付いて……。


ストーリーとしては十分に怖いし、面白い。
ただ、インターネットの闇、という題材を選んだわりにリアリティに欠ける作品。
「リカ」が現代が生み出した人間の恐怖の象徴なのか、単にバケモノなのかがはっきりしない。

もう一つ。
あらすじにある程度のストーリーが書いてあるので、読者は最初から「リカ」がおかしな存在で
あることを説明されている。もし「ホラー」という肩書きもなく、あらすじすら提供されて
いなかったとしたら。
優れたホラー作品は、もう「リカ」が登場しただけでもうその「異常さ」を文章から感じ取る
ことができるもの。申し訳ないけど、それがこの作品にはなかった。最初はただの感じのいい
女性。それがいきなりある章からおかしな行動を取り出すもんだから、しっくりこない。

そこを気にしなければ、特に問題なく読めるし、とってもこわい。この話の動きはホラーならでは
という感じで満足。欲を言えば、「リカ」の内面をもっと描写しても良かったかも。異常者に
内面も何もないんだろうけど、そうなるに至った過程とかをもっと書き込んで、だんだん「リカ」
が哀れになるくらいのところまで持って行ってくれたら。って、それじゃあありきたり?