すべてが猫になる

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墓地を見おろす家 (ねこ3.6匹)

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小池真理子著。角川ホラー文庫


新築、格安のマンションを購入し、住み始めた加納哲平とその妻美沙緒、そして娘の玉緒。その新居の周りは広大な墓地に囲まれていた。やがて、次々と起きる不可解な事件……。


この本の何が怖いって、結局恐怖の対象がわからないところ。
美沙緒夫婦には暗い過去があり、それが事件?と関係あるのかどうかすらも読者の想像まかせになって
いる。もしかしたら、墓地という雰囲気に洗脳された住人たちの空想だったんじゃないかとまで思わせてしまう。
地下での怪我はかまいたちだった、エレベーターが止まったのは偶然だった、すべて説明できてしまう。だから窓の手の跡(このシーンだけなぜかイラストが挿入。こわい~~~)も、外界の大勢の人間の声もすべて空想。
人間の妄想が現実になったとしたら……(ぞぞ)

冒頭と、最終ページの「折り込み広告」の違いも面白い。

文章は海外サスペンスなみにセンス良く、繊細でおしゃれ。翻訳もののようです。
現代の人気ホラー作品を読み慣れた読者には物足りないかもしれませんが、これこそがホラーの原点、
ホラーのためのホラー。ぜひ一度おためしを。。