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螢  (ねこ3.9匹)

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麻耶雄嵩著。幻冬舎

 

オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。(紹介文引用)
21.6.21再読書き直し。
 
麻耶さんのファンになって、当時最新刊だったこの本を探して買いに行った、思い入れのある1冊。シリーズものではないが、典型的な館もの、クローズドサークルもの。文章が硬いのかなかなかスラスラと読み進められなかった。キャラの立った人物がいないのは麻耶作品では珍しいのではないか。オカルトスポット探検サークル内で事件が展開するのと、舌は回るものの真面目な大学生が揃っているので読んでいてそれほど楽しくはない。館内では一人しか殺害されないが、過去の大量殺人で生き残ったと見られる女性の行方や、殺人鬼に殺された旧メンバーとの絡み、館で見かける見知らぬ女の幽霊など、道具立ては完璧。根気よくじっくり読むにはいいかも。
 
しかしトリックに関しては秀逸な作品であると改めて思う。あまり世間で話題になっていなかったのはなぜだろう、なかなかこういう仕掛けのものはないと思うが。
 
以下ネタバレ↓
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
千鶴が女性である、ということは読者に隠されていない。後半、千鶴が女性だと判明するくだりで「??分かってたけど???」となる読者が多そうだ。読者に対して真正面から仕掛けた性別誤認トリックではないということか。男ばかりの参加者に一人女性参加、襲われた千鶴の服を脱がそうとするシーン、全裸になるメンバー。千鶴が女性だとすればおかしいなと思うシーンは結構ある。が、これも「彼らだけが」千鶴を男性だと思い込まされていた、というなら腑に落ちる。
あとは、語り手「諫早」が「長崎」だったという誤認。これに関しては、違和感だけはあったのだ。正直、誰が語り手なのか中盤まで分からなくなることがあって何度も確認した。だが真相にはまったく気付けなかった。
 
最後の一人除いて全員土砂崩れで死亡という結末も麻耶さんらしい闇が感じられていい。