すべてが猫になる

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淋しい狩人  (ねこ3.7匹)

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東京下町、荒川土手下にある小さな共同ビルの一階に店を構える田辺書店。店主のイワさんと孫の稔で切り盛りするごくありふれた古書店だ。しかし、この本屋を舞台に様々な事件が繰り広げられる。平凡なOLが電車の網棚から手にした本に挟まれていた名刺。父親の遺品の中から出てきた数百冊の同じ本。本をきっかけに起こる謎をイワさんと稔が解いていく。ブッキッシュな連作短編集。(裏表紙引用)

 


宮部さんのむか~しの短編集。てか、「ブッキッシュ」て何だろうと思って調べてしまった。

 

東京下町の古書店・田辺書店の店主・イワさんと孫の稔のコンビが織り成す連作人情ミステリー。ストーカーに狙われたOL、亡くなった父が所蔵していた大量の同じ本、幽霊が出ると噂の家で発見された白骨遺体、万引き少年の身体の痣、網棚の文庫本に挟まっていた名刺、ミステリー作家が残した作品をなぞった殺人事件。様々な人々がイワさんの書店を訪ねることによって謎が謎でなくなっていく。そこから人生が変わる人もいれば、その人自身が犯罪者であったり、暴かれて知らないほうが良かったことを経験したりする。連作ながらパターン化されていないストーリーばかりで先が読めず楽しめた。

 

イワさんと稔の関係は最初とても良かったのだが、稔が10歳年上の女性と交際を始めてから不穏な空気に。稔と大喧嘩をして凹むイワさんが気の毒で気の毒で。最終的にいいところに収まるものの、孫というものはいずれ離れていくものなのだなと切なくなった。そこがリアルだったな。

 

特にすごく印象に残るわけではないが、古目の宮部短編集の中では好きなほうかも。