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天啓の殺意  (ねこ3.8匹)

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中町信著。創元推理文庫

 

柳生照彦から持ち込まれた犯人当てリレー小説―柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道由起子に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。要するに作家同士の知恵比べをしよう―という企画は順調に進行するかに見えたが…。問題編を渡したまま、柳生は逗留先から姿を消し、しかもその小説は半年前の実在事件を赤裸々に綴ったものだった。全面改稿決定版。(裏表紙引用)

 

 

中町さんは「模倣の殺意」を昔読んだことがあるが、それ以来ご無沙汰していた。ミステリファンなら1冊は必ず読んでいる作家なのかな。この度ブロ友さんに頂くことが出来た本書を読めることになった。


で、内容。
まあどこに出しても恥ずかしくない「ザ・推理小説」で、作中作と本編が錯綜し、章が変わるごとに真相が変わる構成にとにかく翻弄させられた。推理作家の柳生が編集者の明日子に提案したリレー小説。その解答編をタレントで小説家の尾道由起子に依頼したいと言う。柳生が描いた問題編を読んだ明日子だが、その内容が過去に起きた殺人事件と寸分違わないことに気づく。関係者の氏名まで同じなのだ。やがて明日子は同僚の真弓の協力を得て捜査を始めるが、関係者が次々と死んでしまう。盗まれた解答編、旅館に現れた偽物の女、尾道の浮気――物語の着地点はどこにあるのか。

 

今となっては驚くこともない手法、真相ではあるのだが充分に楽しめた。特に明日子にまで魔手が伸びるところは緊張感MAXで、いよいよこの謎の袋小路から抜け出せるのかとワクワク。真相自体は少し予想したものではあったが、この小説の肝は探偵役にあると思う。多くは語れないが、颯爽と現れ事件を解明し、疾風のように退場していったあの人物…。只者じゃなさそう。

 

文章が古臭いという意見が出ているようだが、私は気にならなかった。むしろ文章の手本のようにスラスラと読みやすかったのでオススメなのだが…まあここは好みなのかな。続けて色々読みまっす。