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青少年のための小説入門  (ねこ4.6匹)

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1982年4月、中学2年だった一真は、万引きを強要された現場で、ヤンキーの登(のぼる)と出会う。
登は、いじめをやめさせる代わりに、「小説の朗読をして欲しい」と、一風変わった提案を一真に持ちかける。
実は登には「小説を書きたい」という野望があった。
ところが、登は幼いころから自由に読み書きができなかった。
しかし、登には一度聞いた物語は一言一句忘れない特技があり、頭の中に湧き出すストーリーを生かして作家になることを目指していた。そこで、一真に小説を朗読させてコンビで作家になることを目指そうとしたのだ。
はじめは嫌々だった一真だが、たくさんの小説をふたりで読むうちに、「面白い小説を創る」という想いが加速していく。しかし、次々に壁がふたりの前に立ちはだかり……。

熱い友情と挫折を描く、渾身の青春物語。書き下ろし。(紹介文引用)

 


初・久保寺さん。うぉぉぉ(;д;!!

 

好みどストライクの作品に出会ってしまったわ!まだ2月アタマなのにヤバいわ!


母子家庭で育った中学生の一真は、不良に万引きを強要されたことが縁で駄菓子屋の店番をしていた田口登と知り合う。登はヤンキー上がりだが小説家志望で、一真に小説の朗読をするよう頼み込む。なぜ自分で描かないのかというと、登はディスレクシア(識字障害)の持ち主だったのだ。一真と登は名作の朗読を繰り返すうち小説の面白さに目覚める――。

 

ディスレクシアという障害のことはここ数年どこかで耳にしたことがある。字を識別する能力が乏しく、読み書きが非常に困難だという。しかし朗読という手段により本の面白さに気づく登も、朗読によって名作の数々に心奪われていく一真も、そしてその関係性も非常に素晴らしく、本物だった。

 

面白い小説には何があるのか、またつまらない小説の特徴とは、と日々本を朗読しては小説家になるための研究を続ける2人がとても良かった。また、登が思いつくお話がどれも面白くて読みたくてたまらなくなる。朗読シーンから引用される名作も数多く、こちらも読みたい気にさせられる。図書館司書の柳沢さんや本条さんもすごくいいね。この2人を自分に投影し一真たちを陰で応援しながら読んだというのがピッタリくるかも。

 

思っていたより早く2人は小説家になるのだが、有名な評論家に酷評されたり、登が事件を起こしたり、登の祖母がガンになったり、一真の初恋相手・かすみがアイドルになったりととにかく目まぐるしい。

 

考え方によってはとても悲しい物語でもある。登の母親の問題もあるし(でも血のつながりをそこまで神格化しなくても)、かすみとの関係も私が望んだ方向とは違った。だからこそ、1人の少年のサクセスストーリーとしてリアルに響いた。大きな山場や迫り来る感動こそインチキだ。