すべてが猫になる

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本と鍵の季節  (ねこ4.2匹)

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堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門(しもん)と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。
そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが……。

放課後の図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。
爽やかでほんのりビターな米澤穂信の図書室ミステリ、開幕!(紹介文引用)

 

 

ホノブの新刊。平凡な、高校二年生の図書委員男子二人による、本と鍵にまつわる事件に絡んだ連作ミステリ。

 

金庫の鍵の暗号を推理したり、美容室のロッカーにまつわる事件を暴いたり、不良生徒にかけられたテスト問題窃盗事件を解決したり。ヒマな図書委員二人に次々と先輩や後輩が「頼みごと」をする。他人の嘘の根底には真っ当なものがあると信じる堀川次郎と、笑顔で近づいてくる人には裏があると考える松倉詩門。米澤作品に必ずはまる、「ちょっと達観した、ちょっと冷めた視線」で人生を捉えている若者の姿が今回も生きていた。少し小市民シリーズに被る気もしたが、キャラクターがあまり立っていないようでいて、実は物語が進むにつれ各々の個性が見えてくる構成だと判明。見事だった。最初は松倉がほぼ探偵役だよなあと思わせて、次郎の能力は別にあり、松倉がそれを引き立てていくという憎い展開。


普通に謎を推理し解決するだけではなく、その問題を依頼した人間にさらに裏の思惑があるというスタイル。それが悪か善かはそれぞれ違うが、ここまで人間の悪を見せつけられ続けると「次のコイツもそうなのだろう」と思ってしまう自分に対して、ちょっとした牽制がある。たとえば自殺した友人が最後に読んでいた本を探す「ない本」。考えすぎかもしれないが、それすらも作者の狙いなのだとしたら。

 

シリーズにするにはビターすぎる結末かもしれないが、私はここで終わらせていいとは思わない。続編希望。