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予告された殺人の記録/Cronica de una Muerte Anunciada  (ねこ3.8匹)

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G・ガルシア=マルケス著。野谷文昭訳。新潮文庫


町をあげての婚礼騒ぎの翌朝、充分すぎる犯行予告にもかかわらず、なぜ彼は滅多切りにされねばならなかったのか?閉鎖的な田舎町でほぼ三十年前に起きた幻想とも見紛う殺人事件。凝縮されたその時空間に、差別や妬み、憎悪といった民衆感情、崩壊寸前の共同体のメカニズムを複眼的に捉えつつ、モザイクの如く入り組んだ過去の重層を、哀しみと滑稽、郷愁をこめて録す、熟成の中篇。(裏表紙引用)





読むべき100冊のうちの1冊。ラテンアメリカ文学かな?登場人物が多い上に全員長いフルネーム登場だからメモを取りましょう。真っ黒になりますよ。これぞ「予告された殺人の記録」の記録。

さて、ある1人の若き青年サンティアゴ・ナサールがどうして殺されたのか。被害者の友人である名無しの語り手が30年前の大事件を関係者の証言を元に構築する物語。最初にサンティアゴが殺されると分かっているところから始まり、続いて青年が殺される直前どう行動していたのか、何を語っていたのか、母親や使用人はどう見ていたのかが明らかになる。やがて語り手のいとこアンヘラ・ビカリオが生娘ではないことを理由に実家へ戻されるところまで遡り、アンヘラがその相手をサンティアゴだと告白(ウソ)。それに怒った双子の兄貴たちが「サンティアゴ許さねー!殺してやる!」と息巻いて・・・。

私には解説にあるような小難しい構成の妙や共同体のメカニズムの考察などは出来ないのだが、小さな町で起きた残酷すぎる殺人事件をどうしてこれだけの人が事前に知っていて止められなかったのか、はたまたこの時代の異国の人々の価値観の異常性がこれほどハッキリ記された物語はそうないのだろうと思った。最後の最後に重要なシーンを持ってくるあたり、期待し焦らしに焦らされた自分は作者の手のひらの上で転がされたということなのだろう。サンティアゴの死に様が衝撃すぎて夢に出そうだ。