すべてが猫になる

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一九八四年/Nineteen Eighty-Four  (ねこ4.5匹)

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ジョージ・オーウェル著。高橋和久訳。ハヤカワ文庫。

 

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。 (裏表紙引用)

 


言わずと知れたSF作品の名作で、「読んでおくべき100冊」にも必ずランクインされている本書。イギリスでは「読んだことにしている本1位」なんだとか(笑)。まあ確かにこれを通読するのにはある程度のリテラシーが必要なんだろうな。私自身、第3章までは割とムリして読んでいた。


舞台は近未来のイギリス(架空国家オセアニア)。世界はオセアニア、ロシア、中国の三国で成り立っており、真理省に勤めるウィンストンは歴史の改竄に従事。完全なる監視と不自由を強いられる社会で日々反逆心を募らせていた。ある日同じ思想を持ったジュリアと出会ったウィンストンは、仲間と共に反政府運動に参加するが――。というお話。


二重思考、思考警察、ニュースピーク語、二分間憎悪、表情犯罪などというパワーワードが溢れる。その言葉が出てきても「説明しよう、思考警察とは――」みたいな文章は入らないので自力で意味を補完するしかない。特に第1章、第2章は政治小説の色が濃くひたすら説明が続き物語が動かないので苦行。

 

第2章までは1948年に描かれただけあって流石にもう斬新さはない、骨董的価値な意味合いの名作ということではないのかと思っていたのだが――第3章が激アツだった。読むに堪えない拷問に次ぐ拷問描写、人としての尊厳を奪われ洗脳されていくウィンストン。彼はどうなるのだろうか。この国の未来は。ウソばかりの政治家、自分の身に直接降りかからなければ良いと深く物事を考えたくない国民、必要性のある売春、悲劇的格差、フィクションであるはずのディストピアはまるごとどこかに似ていないか。


エンターテインメントとして期待すると返り討ちに遭う作品かもしれないが、時代を越えて読み継がれる作品をナメてはいけなかった。面白かった。