すべてが猫になる

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QJKJQ  (ねこ3.9匹)

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佐藤究著。講談社文庫。

 

女子高生の亜李亜は、猟奇殺人鬼の一家に生まれ、郊外でひっそり暮らしていた。父は血を抜いて殺し、母は撲殺、兄は咬みついて失血させ、亜李亜はナイフで刺し殺す。ところがある日、部屋で兄の惨殺死体を発見する。翌日には母がいなくなり、亜李亜は父に疑いの目を…。第62回江戸川乱歩賞受賞の長編ミステリー。 (裏表紙引用)

 


初挑戦の作家さん。知らなかったのだが、江戸川乱歩賞なのだね、意外すぎてビックリ。こんなに好みのハッキリ分かれそうな作品、ハヤカワのSF文庫(白背)から出したほうが良かったんじゃないかと思うのだが。その方が届けたい読者層にマッチしたかも。乱歩賞理由で読む読者なら、まずはやはりミステリーとしてどうか評価したいだろうと思う。

 

だが、物語としてなら輝く点はある。まず一家全員が猟奇殺人鬼という設定が奇抜だし、語り手が高校生の少女なので世界に入り込みやすい。一見ラノベのような作風なので文章力が懸念されるがそこは問題なさそう。兄が殺され、母が行方不明という展開も充分惹きつけられる。自分は「え、中盤でもうネタバラシするの?」と驚いたことを告白しておく。この「世界反転」とも言うべきトリックは使い方を間違えれば「使い古し」になりかねない危険があり、自分も「ああ、またこの系統か」とガッカリしかけたのだが。とにかく後半からの畳み掛けが凄い。褒めてるかどうかわからないのだが、あの真相からさらに物語を続けてしまう荒技は「新しい」と言わざるを得ない。あとグロ描写についてはこの程度なら私はたいしたことないの範疇。


ところどころ引っかかる部分はあるし綺麗にまとまった作品とは言えないのだが、個人的には結構ツボだった。まあ、次も読んでみようかな。読みやすいし。