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宿命と真実の炎  (ねこ3.9匹)

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人間の心を捨ててもずっと一緒にいたかった。
何が“警察官連続殺人事件"を引き起こしたのか?
山本周五郎賞受賞作『後悔と真実の色』続編。渾身のミステリ長編!!(紹介文引用)

 


西條シリーズ第2弾ってことでいいのかな?かつて「指蒐集家事件」を解決し(「後悔と真実の色」)、不倫騒動で警察を追われ一時はホームレスにまで身を落とした西條は、現在警備員の職に就いている。

 

主なメインの視点は3人。この物語で発生した警察官連続殺人事件、最初に犯人は明かされているので、西條がこの捜査にどう関わるか、新人高城が警察の女性を軽んじる風潮の中どう解決していくかが読みどころ。犯人である渕上の悪魔のような犯行心理も興味深い。

 

西條が馴染みの古本屋で店主と心を通わせるシーンが好き。理那との接触で西條のスーパーマンのような洞察力が生かされていくのが痛快だが、この本好きの店主の力も大きい気がする。理那と村越のコンビも、最初はセクハラ調で飄々とした村越に反感を抱いていた理那が村越の能力を認め、お互いを尊重し合って事件に向き合うようになる姿が素敵だった。


事件そのものは、さすがに今どこにでも防犯カメラがある時代、これほど何人もの警察官を殺せるかっていう疑問もある。渕上の、レイを全力で守るという決意が「殺人」というそこから最も遠い手段でしか表現出来ないところも。頭がいいのか悪いのか。過去に経験した事件は確かに善良な市民として許しがたいものだが、無関係の人間まで手にかけた時点でもうアウト。ラストの救いがたいあの人物と同じく彼もそういうことなのだろうか。そもそも憎むべき相手は白バイ隊員じゃないだろう。理那の父親との感動的なエピソードや、古本屋店主の娘のストーカー問題など、背景がしっかりしていただけにちょっと残念。

 

というわけで数点惜しいが、最後まで面白く読ませられた。貫井作品で一番好きなジャンルだ。